商品(乳幼児用浮き輪)の取扱説明書中の挿絵の著作物性が問題となった事例 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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商品(乳幼児用浮き輪)の取扱説明書中の挿絵の著作物性が問題となった事例

 

▶平成28年7月27日東京地方裁判所[平成27(ワ)13258]

(2) 被告挿絵について

ア 原告挿絵が著作物に当たるかについて

(ア) 原告挿絵1について

原告挿絵1は,①本件商品である浮き輪を描いた絵に,②「上側」,「空気栓」及び「ベルト」との文字による指示説明を加えたものである。

上記①の絵は,本件商品の取扱説明書において,本件商品について説明するために,単に本件商品自体を描いたにとどまるものであり,その描き方には一定の選択肢があるとしても,当該目的・用途による制約が掛かるものである。上記絵は立体的な描き方をしているが,それ自体はありふれたものであるし,立体的に描く場合には,上記の目的・用途から,ある程度忠実に形状が分かりやすいように描く必要があると考えられるところ,上記絵の表現の仕方(技法等)はありふれており,個性の発揮は認められない。

上記②のとおり指示説明を加えることも,製品の取扱説明書においてごくありふれたものである。

そうすると,原告挿絵1は,創作性を欠き,著作物に当たるとは認められない。

(略)

(エ) 原告挿絵4について

原告挿絵4は,①本件商品を乳幼児に試着する場面における(a)本件商品,(b)乳幼児の上半身及び(c)乳幼児に本件商品を装着させる保護者等(以下,単に「保護者」という。)の腕を記載した絵に,②「試着してみる」との文字,3つの矢印及び円形の点線を加えたものである。

上記①の絵について,(a)の部分はそれ自体としては前記(ア)のとおりありふれており,(c)の部分もそれ自体としてはごくありふれているが,(b)の部分は乳幼児の顔・頭・恰好等をどのように描くかについてはある程度選択の幅がある上,(a)ないし(c)をどのような範囲でどのような位置関係で組み合わせて描くかについても,選択の幅がある。本件商品の使用方法等を示す挿絵という性質上,表現の選択の幅はある程度限られる面があるものの,上記のような絵全体としての描き方には少なからぬ選択肢が存すると考えられるところ,上記①の絵を全体として見た場合に一定の個性が発揮されていることは否定できない。

そうすると,上記②の点についてはありふれたものであるにしても,原告挿絵4について,その創作性を否定して,著作物としての保護を一切否定することは相当でなく,狭い範囲ながらも著作権法上の保護を受ける余地を認めることが相当というべきである。原告挿絵4は,本件商品の取扱説明書における挿絵ではあるが,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものであり,美術の著作物に当たるというべきである。

(略)

ウ 小括

以上の次第で,被告挿絵4ないし6は,それぞれ,著作物たる原告挿絵4ないし6を複製したものということができる。

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