将棋のルール・マナーの説明の著作物性が問題となった事例 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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将棋のルール・マナーの説明の著作物性が問題となった事例

 

▶令和5年3月16日知的財産高等裁判所[令和4(ネ)10103]

(3) 原告文章2について

ア 原告文章2は、将棋の駒の準備や片付けに関して説明するものであるところ、その記載内容は、いずれも将棋のルール又はマナーであって、当該内容自体から創作性を認めることはできない。

もっとも、「「雑用は喜んで!」とばかりに下位者が手を出さないようにしましょう。」という部分については、控訴人自身の経験に基づき、初心者等が陥りがちな誤りを指摘するため、広く一般に目下の者が「雑用」を率先して行うに当たっての心構えを示したものといい得る表現を選択し、これを簡潔な形で用いた上で、しかし、逆に、将棋の駒の準備や片付けに関してはこれが当てはまらないことを述べることで、将棋の初心者にも分かりやすく、かつ、印象に残りやすい形で伝えるものといえる。この点、本件番組の制作時に参考にした書籍やウェブサイトである被控訴人が当審において提出した証拠のうち駒の準備や片付けについて記載されたものにも、類似の表現は見受けられない。したがって、上記部分は、特徴的な言い回しとして、控訴人の個性が表現として現れた創作性のあるものということができ、著作物性を有するというべきである。これに対し、原告文章2のうちその他の部分における表現は、ありふれたものといえ、控訴人の何らかの個性が表現として現れているものとは認められない。

(略)

(6) 原告文章5について

ア 原告文章5は、将棋の「待った」について説明するものであるところ、その記載内容は、いずれも将棋のルール又はマナーであって、当該内容自体から創作性を認めることはできない。

もっとも、「着手した後に「あっ、間違えた!」「ちょっと待てよ・・・」などと思っても、勝手に駒を戻してはいけません。」という部分については、将棋を指す者が抱き得る感情を分かりやすく簡潔に表現することで、将棋の初心者にも印象に残りやすい形で伝えるものといえる。この点、当審提出証拠のうち「待った」について記載されたものの中に、類似の表現はほとんど見受けられず、唯一、「仮に駒から手を離した瞬間に「あ、間違っている」と気づいたとしても」という類似の表現が用いられているものはあるが、原告文章5は、控訴人自身の経験に基づき、感嘆符等の記号を用いるほか、「あっ、間違えた!」という語と「ちょっと待てよ・・・」という語を続けてたたみかけることで、将棋を指す者が抱き得る感情とルール又はマナーとしての将棋の「待った」をより生き生きと分かりやすく、かつ、印象深く表現するものといえる。したがって、上記部分は、控訴人の個性が表現として現れた創作性のあるものということができ、著作物性を有するというべきである。これに対し、原告文章5のうちその他の部分における表現は、ありふれたものといえ、控訴人の何らかの個性が表現として現れているものとは認められない。

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