著作権移転の準拠法

 

▶平成28年6月22日知的財産高等裁判所[平成26(ネ)10019等]

2 著作権移転の有無(争点2)

(1) 準拠法について

ア 原告協会は,フランスの法人であるところ,同協会に本訴で問題となる会員作品の著作権を移転した会員は,種々の国の人間からなるので,権利移転関係の準拠法を検討する必要がある。

イ 著作権の移転について適用されるべき準拠法を決定するに当たっては,移転の原因関係である契約等の債権行為と,目的である著作権の物権類似の支配関係の変動とを区別し,それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべきである。

まず,著作権の移転の原因である債権行為に適用されるべき準拠法について判断するに,通則法7条により,第一次的には当事者の選択に従ってその準拠法が定められるべきである(同法施行(平成19年1月1日)前は法例7条1項により「当事者ノ意思」を準拠法とするが,実質的に変わりはない。)。そして,フランス法人である原告協会と会員(大部分がフランス人)との間の著作権移転に関する契約については,フランス法を選択する意思であったと解される。仮に,会員の中に,原告協会との契約において,フランス法を選択する明確な意思がなかった場合には,通則法8条により,最密接関連地法を適用することになるが,フランスの「1985年7月3日付けフランス共和国著作権並びに実演家,レコード製作者及び放送事業者の権利に関する法律」に基づいて設立されたフランス法人との契約であり,原告協会がフランス及び外国における著作権管理を行っていることからすると,最密接関連地もまたフランス法といえ,適用法に変わりはない(同法施行前は法例7条2項により「行為地」を準拠法とするが,本件ではフランスを行為地といえるので,実質的に変わりはない。)。

次に,著作権の物権類似の支配関係の変動について適用されるべき準拠法について検討するに,一般に,物権の内容,効力,得喪の要件等は,目的物の所在地の法令を準拠法とすべきものとされ,通則法13条は,その趣旨に基づくものである。著作権は,その権利の内容及び効力がこれを保護する国の法令によって定められ,また,著作物の利用について第三者に対する排他的効力を有するから,物権の得喪について所在地法が適用されるのと同様に,著作権という物権類似の支配関係の変動については,保護国の法令が準拠法となるものと解するのが相当である。

このように,著作権の物権類似の支配関係の変動については,保護国である我が国の法令が準拠法となるが,著作権の移転の効力が原因となる譲渡契約の締結により直ちに生ずるとされている我が国の法令の下においては,原告協会と会員との間の著作権移転に関する契約が締結されたことにより,著作権は会員から原告協会に移転することになる。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/