てんかん発作の症例に関するアニメーション映像の著作者該当性

 

▶令和6年3月28日知的財産高等裁判所[令和5(ネ)10093]

3 争点2(本件映像の著作者)について

⑴ 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者である(著作権法16条)。

⑵ 控訴人の関与について

認定事実のとおり、控訴人は、本件映像の制作に当たり、絵コンテ、レイアウト、背景、原画及び動画の各作成並びに彩色、撮影、音響及び編集の各作業を自ら行い、又はその一部を他の業者に委託した上で、これらの業者に対する指示を行っている。そして、本件映像に描写されている人物の体格、人相、着衣、発作前後の動作、所在する場所、背景となる造作や家具、人物を捉える方向や画角については、視聴者がてんかん発作として見られる特徴的な動きに集中できるように選択がされているものと認められ、これらの創作的な表現は、控訴人の上記各作業によって作出されたものといえる。

(略)

⑸ 上記⑵ないし⑷によれば、本件映像の制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者は、控訴人であって、A医師、被控訴人、C医師及びD医師はこれに当たらないと認められる。

A医師の関与は、全体として見れば、控訴人に対するてんかんに関する情報提供や、本件映像を医学的に誤りのない内容にするための確認がほとんどであり、それらは本件映像の制作を監修する立場からの助言若しくはアイデアの提供というべきものであって、本件映像の具体的表現を創作したものとは認められず、A医師が本件映像の制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与したとはいえない。また、本件映像で取り上げられた症例及びその再生順序を決定したことについては、本件映像が本件書籍の付属物であることから、本件書籍に準拠して上記決定をしたにすぎず、上記決定をしたことをもって、A医師が本件映像の全体的形成に創作的に寄与したと認められることにもならないというべきである。

被控訴人、C医師及びD医師については、これらの者による関与が前記⑷のとおりのものにすぎないことからすれば、これらの者が本件映像の全体的形成に創作的に寄与した者に当たるとは認められないというべきである。

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