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法29条1項の意義と解釈

 

▶令和6年3月28日知的財産高等裁判所[令和5(ネ)10093]

4 争点3(本件映像の著作権者)について

⑴ 著作権法29条1項は、「映画の著作物の・・著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。」と規定している。

前記2のとおり、本件映像は映画の著作物であると認められるから、本件映像の著作権の帰属については、著作権法29条1項が適用され、本件映像の著作者である控訴人が、映画製作者に対し、本件映像の製作に参加することを約束しているときは、本件映像の著作権は当該映画製作者に帰属することになる。

この点に関して、被控訴人は、著作権法29条1項は劇場用映画を想定した規定であり、本件書籍の従たる付属物として作成された本件映像には適用されないと主張するが、同項が映画の著作物のうち劇場用映画のみに適用されると解すべき根拠、あるいは本件映像が映画の著作物と認められるにもかかわらず同項が適用されないと解すべき根拠はなく、被控訴人の上記主張は採用することができない。

⑵ 著作権法29条1項にいう「映画製作者」は、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」である(同法2条1項10号)。

また、著作権法29条が設けられたのは、①従来から、映画の著作物の利用については、映画製作者と著作者との間の契約によって、映画製作者が著作権の行使を行うものとされていたという実態があったこと、②映画の著作物は、映画製作者が巨額の製作費を投入し、企業活動として製作し公表するという特殊な性格の著作物であること、③映画には著作者の地位に立ち得る多数の関与者が存在し、それら全ての者に著作権行使を認めると映画の円滑な市場流通を阻害することになることなどを考慮すると、映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属するとするのが相当であると判断されたためであると解される。

著作権法2条1項10号の文言及び同法29条1項の上記趣旨からみて、「映画製作者」とは、映画の著作物を製作する意思を有し、同著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって、そのことの反映として同著作物の製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者のことであると解するのが相当である。

 

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