【編集著作物】著作権法第13条の解説です 2/3

 

▶編集著作物の著作者の権利と各素材の著作者の権利との関係

 

上述したように、「編集著作物」は、その素材の選択又は配列によって創作性を有すると認められる場合に、全体で1つの著作物として保護されることになっています。したがって、編集著作物の著作者の権利(著作権及び著作者人格権)は、当該編集物を構成する著作物の著作者の権利(著作権及び著作者人格権)に影響を及ぼすことはありません。第2項は、このことを確認的に規定しています**。

**(参考:ベルヌ条約2条(5))

(5) Collections of literary or artistic works such as encyclopaedias and anthologies which, by reason of the selection and arrangement of their contents, constitute intellectual creations shall be protected as such, without prejudice to the copyright in each of the works forming part of such collections.

(5) 百科事典、アンソロジー[選集]のような、素材[内容]の選択及び配列によって知的創作物となる、文学的又は美術的著作物の編集物は、そのような編集物の部分を構成する各著作物の著作権を害することなく、それ自体で保護される。

 

本条第2項は、既存の著作物を編集して編集物を完成させた場合に、素材の選択方法や配列方法に創作性が見られるときには、そのような編集を行った者に編集物を構成する個々の著作物の著作者の権利とは独立して、当該編集著作物に対する保護を与える趣旨を注意的に規定したものと解されます。例えば、編集著作物に対する著作権の保護期間は、その部分を構成する著作物にかかる著作権の保護期間とは別個に計算されることになります。

 

個々の素材が著作物で構成される編集著作物を(全体で)利用しようと欲する者は、当該編集著作物の著作権者の許諾を得ただけでは足りず、その編集著作物を構成する個々の著作物の著作権者の許諾をも必要とします。一方、編集著作物の著作権が及ぶのは、あくまで編集著作物として利用された場合に限られ、当該編集物の部分を構成する著作物が個別に利用されるにすぎない場合には、当該編集著作物の著作権利はこれに及ばないと解されます。そにため、編集著作物に収録されている個々の著作物の利用(だけ)を欲する者は、その個々の著作物の著作権者からの利用許諾を得れば足り、当該編集著作物の著作権者からの利用許諾を得る必要はありません。少々ややこしいので、注意してください。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/