過失責任を認定した事例(委託したライターが写真投稿サイト「Flickr」から写真を複製した事例)

 

▶令和4年5月31日東京地方裁判所[令和3(ワ)9618]

(注) 本件は、原告が、被告は、原告の著作物である写真を複製して自身のウェブサイトに無断で掲載し、同写真に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)並びに著作者人格権(氏名表示権)を侵害したと主張して、被告に対し、民法709条及び著作権法114条3項に基づき、損害賠償等の支払いなどを求めた事案である。

 

3 争点3(被告が原告写真を利用したことにつき故意又は過失があるか)について

(1) 前記前提事実及び証拠によれば、本件ライターは、本件委託契約に基づいて、本件投稿サイト[注:写真投稿サイト「Flickr」のこと]に掲載されていた原告写真を複製して被告写真を作成し、これを使用して記事を作成したこと、本件投稿サイトでは、原告写真の下に「Some rights reserved」の表記があり、同表記部分をクリックするとライセンスの条件が記載されたページに移転する仕組みになっていたこと、及び被告が本件ライターから被告写真が掲載された記事の納品を受けた際、被告写真にはその出典が記載されていなかったことがいずれも認められる。これらの事情に照らせば、被告は、本件ライターの記事をウェブサイトに掲載するに際し、本件ライターに被告写真の出典を尋ねるなどして、被告写真が第三者の著作権ないし著作者人格権を侵害するものに該当しないことを確認することが可能であり、それにより同侵害を回避することが可能であったといえ、被告においてはその旨の注意義務が存したものと認められる。

ところが、証拠によれば、被告は、そのような確認をしないまま被告写真を本件ウェブサイトに掲載したことが認められ、被告が第三者の著作権や著作者人格権を侵害することのないように注意を払ったことをうかがわせる事情は認められない。

したがって、被告には原告写真の利用につき過失があったと認めるのが相当である。

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