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【同一性保持権】著作権法第20条を解説します。3/3

 

▶同一性保持権が及ばない「改変」とは(第2項の解説)

 

次の判示部分が、第2項の趣旨を端的に述べています(前掲平成3年12月19日東京高等裁判所[平成2(ネ)4279]参照):

『著作権法は、著作物は、著作者の人格の反映であることから、前述のように、著作者の意に反する著作物に対する変更、切除、改変等の行為を禁止し、著作物の同一性を保持することにより著作者の人格権の保護を図っているものである。しかしながら、他方、かかる同一性保持権を厳格に貫いた場合には当該著作物の利用上支障が生じ、かつ、著作権者においても同一性保持権に対する侵害を受忍するのが相当であると認められる場合については、同条2項において、著作権者の意思に係らしめず、その同意を得ることなく変更、切除、改変等の行為が許容される例外的場合を規定しているところである。』

 

第2項各号は、真に止むを得ない場合において必要最小限度で許容される改変を規定したもので、これらは厳格に解釈適用されるべきで、安易な拡大解釈は避けるべきである、とするのが通説です。

 

(1号) 所定の規定によって(教科用図書や教科用代替教材等への掲載、教科用拡大図書等の作成、学校教育番組の放送等において)著作物を自由に利用できる場合における用字・用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められる行為は、同一性保持権の侵害には当たりません。

例えば、常用漢字以外の漢字をひらがなに改める、旧仮名遣いを現代仮名遣いに改めるなどの行為がこれに該当します。同一性保持権に対する教育的配慮からの制限です。

 

(2号) 建築物の増改築、修繕、模様替えによる改変は、同一性保持権の侵害には当たりません。

建築物の実用的・経済的見地から、主として居住という実用目的に供される建築物の効用を維持増大される増築改築等の行為に対する同一性保持権の制約を規定したものです。建築物の取り壊し自体は、通常は、同一性保持権侵害の問題とはなり得ないと解されます。

 

(3号) 特定のコンピュータで利用できないプログラムの著作物を当該コンピュータで利用できるようにするための改変、又はプログラムの著作物をより効果的に利用し得るようにするために必要な改変は、同一性保持権の侵害には当たりません。

例えば、プログラムにバグ(誤り)があるため利用できない場合にそのバグを取り除くこと、プログラムの処理速度を上げるため又はバージョンアップによる機能追加のための改変など。このような行為は、通常、プログラムの著作者の人格的利益を害すると考えられないことから、同一性保持権を制限したものです。

 

(4号) その他、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしてやむを得ないと認められる改変は、同一性保持権の侵害には当たりません。

例えば、明らかの誤字脱字を修正すること、絵画の出版にあたり印刷技術上の制約により原画の微妙な色彩が忠実に再現できないことなど。劇場用映画をテレビ放送する際に行われる短縮・再編集(トリミング)については、事情に応じて、これを「やむを得ないと認められる改変」と解される場合もあり得ます(平成10年07月13日東京高等裁判所[平成7(ネ)3529]参照)。

 

なお、著作物を全く改変しない場合であっても、「著作者の名誉又は声望を害する方法」によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権の侵害行為とみなされます(113条11項)。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/