法112条の意義と解釈

 

▶昭和60年10月17日東京高等裁判所[昭和59(ネ)2293]

控訴人の右主張は、立論の基礎を著作権法第112条第2項に置くが、主張の趣旨は、同条第1、2項に規定する請求権の双方についていわゆる必要性のあることを要件とするものと解される。しかしながら、著作権法第112条第1項は、著作権者に、著作物に対する排他的独占的権利である著作権に基づく一種の物権的請求権として、侵害の停止又は予防を求める請求権を認めたものであり、その所以は、文化的所産としての著作物についての権利保護を全うするためには、単に、侵害行為に対する損害賠償請求権を認めるのでは足りず、その侵害を可及的速やかに停止させるとともに、侵害の危険をも未然に防止する必要があることによるのであつて、同条第2項は、第1項の規定による請求と同時に、侵害の停止又は予防に必要な具体的措置を請求することができることを規定したものであり、右規定の趣旨及び文言に照らし、第1項の侵害停止等の請求には、著作権の侵害行為が存するか、又は侵害の具体的危険が存すれば足り、侵害者の故意、過失等の主観的要件を必要とするものではなく、また、権利侵害の違法性が高度な場合にのみ限定して認めるべきものでもなく、かつ、侵害行為の停止等によつてうける加害者側の損失と被害者側の利益とのいわゆる比較衡量によつてその請求の当否を決すべきものでもない。この点は、現行法上明文の規定を欠く個人の自由、名誉、身体、健康、生活等の一般的な人格的利益ないし権利の侵害に対する差止請求とは、その成立要件を異にするといわなければならない。そして、第1項の侵害停止等の請求と同時になされる侵害の停止又は予防に必要な措置の請求は、侵害の停止又は予防に必要な限度でなされるのであるから、その措置が侵害の停止又は予防に必要なものであるかどうかについては判断することを要するが、その措置を求める請求権の成否が控訴人の主張する必要性の有無、具体的には、違法性の強弱や損害の多寡によつて左右されるものではない。したがつて、控訴人の前記主張は失当といわなければならない。

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