【著作者人格権の一身専属性】関係する条文を解説します。2/2

 

▶第60条の解説

 

上述したように、著作者人格権は、著作者の死亡によってそれと同時に消滅し、相続の対象となることはありません。そのため、著作者の人格権(人格的利益の保護)はそこで完全にストップするのかという問題があります。この点、ベルヌ条約で、「著作者の死後」においてその人格権(人格的利益)を保護する国においては、「(そのような保護は)少なくともその(著作者の)財産的[経済的]権利(著作権のこと)が消滅するまでは存続する」ものとされています(ベルヌ条約6条の2(2)参照)。そこで、わが国では、「著作者の死後における人格的利益の保護」を担保するため、本条が設けられています。

 

ここで「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為」とは、公表権(18条1項)、氏名表示権(19条1項)、同一性保持権(20条1項)を侵害する行為のみならず、法113条(侵害とみなす行為)中、「著作者人格権を侵害する行為とみなす」と規定されている行為(1項、8項、11項参照)を含むと解されます。

但書き中「行為の性質」とは、「著作者人格権の侵害となるべき行為」が主体的か、付随的か、また、その行為が積極的か、消極的かということを意味し、「行為の程度」とは、「著作者人格権の侵害となるべき行為」によって作成された侵害複製物の部数やその頒布領域、当該侵害行為の頻度等を意味すると解されます。「社会的事情の変動」とは、社会的価値観の変化や社会的制度の推移等(例えば、常用漢字の範囲の変化など)を意味しています。

 

さらに、本条の実効性を担保するため、著作者の死後におけるその人格的利益を保全できる者(例えば、著作者の遺族のうち一定の範囲の者)が、法116条で定められています。

 

以上のように、著作者人格権は著作者の死亡と同時に消滅する(59条)のですが、第60条及び第116条の規定によって、その人格的利益の保護は、著作者が死亡した後も相当長期にわたって続くことになります。この点は、注意してください。

なお、著作者の死後においてその人格的利益を侵害する行為は「犯罪」であると捉えられており、第60条に違反した者には、刑事罰として、「500万円以下の罰金」が科せられます(120条)。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/