【氏名表示権】著作権法第19条(1項, 2項, 3項)を解説します。3/3

 

▶第2項の解説

 

著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従って著作者名を表示することができます(2項)。どういうことかと言うと、著作者が別段の積極的な意思表示(例えば、それまで用いていたペンネームを変更したり、無名表示だったものを実名表示に切り替えたりすること)をしない限り、著作物の利用者がその著作物について「すでにその著作者が表示しているところに従って」著作者名を表示していれば、氏名表示権の侵害とはならない、ということを意味しています。

 

▶第3項の解説(著作者名の表示の省略)

 

著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができます(3項)。典型的な例としては、ホテルのロビーでBGMを流す場合に、作詞家名や作曲者名をアナウンスする必要はありません(作詞家名や作曲者名をアナウンス(表示)しなくても、氏名表示権の侵害に当たりません)。

 

ここで、「著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがない」とは、著作者名を省略しても、他の者が著作者であるとか、無名の著作物であるとか、といった誤解・錯覚等を公衆に生じさせないような場合をいいます。また、「公正な慣行に反しない限り」との前提がついていますので、本規定による著作者名の表示の省略が認められるためには、すでにそのような省略行為を容認しうる「公正な慣行」が確立している必要があります。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/