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【氏名表示権】著作権法第19条(1項, 2項, 3項)を解説します。2/3

 

▶第1項の解説(氏名表示権の意義)

 

「氏名表示権」は、著作者が自己の著作物の著作者であることを主張するために、その著作物の原作品に又はその複製物に著作者名を表示するのか否か、表示するとしたら実名を表示するのか変名(ペンネーム・雅号など)を表示するのかを決定する権利(その二次的著作物における原著作物の著作者名の表示についても同様**)です。

**(注) 二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示

e.g. 小説(原著作物)→脚本(二次的著作物)→氏名表示

例えば、ある小説(原著作物)を脚色して、脚本が作成されたとします。この脚本は、原著作物である小説の「二次的著作物」(2条1項11号)になるのですが、当該脚本の公衆への提供又は提示に際しても、その原著作物である小説の著作者には氏名表示権が認められます(1項後段はこのことを述べています)。

 

「著作者名を表示すべきところを表示しない行為(実名又は変名を削除する行為)」はもちろん、「著作者に無断で著作者の実名又は変名を勝手に代えて表示する行為」、「無名・変名の著作物に著作者の実名を加えて表示する行為」などは、いずれも氏名表示権の侵害となります。また、「他人の著作物をあたかも自分の著作物であるかのように装って利用する行為(いわゆる盗作・剽窃行為)」は、著作権の侵害問題になりうることはもちろん、真の著作者名を表示していない点で氏名表示権の侵害問題ともなりえます。

 

「氏名表示権」については、これを純粋に著作者の人格権利益の保護のためだけに認められていると解するよりも、真実に即した著作者の氏名表示を担保するという意味で、公益上の要請から捉えることも可能です。つまり、氏名表示権については、公表権(18条1項)のように、著作者の同意があれば侵害成立が阻却されることを前提とするような規定(18条2項参照)が設けられていないこと、著作者が他人名義で氏名表示をすること又はさせることまで許容する規定が設けられていないこと、かえって著作者ではない者の実名等を表示した著作物の複製物を頒布する氏名表示権侵害行為については公衆を欺くものとして刑事罰の対象となり得ることをも別途定めていること(121条**)からすると、「氏名表示権は、著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく、むしろ、著作物あるいはその複製物には、真の著作者名を表示することが公益上の理由からも求められている」ものと解されます(平成18年02月27日知的財産高等裁判所[平成17(ネ)10100等]参照)。

**(注) 著作権法第121条:『著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物(原著作物の著作者でない者の実名又は周知の変名を原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を含む。)を頒布した者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。』

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/