逮捕動画の投稿によって被害を受けた被害者による、当該動画の利用について適法引用を認定した事例

 

▶令和4年10月28日東京地方裁判所[令和3(ワ)28420]▶令和5年3月30日知的財産高等裁判所[令和4(ネ)10118等]

⑶ 著作権法32条1項の引用の成否について

ア 他人の著作物は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の目的上正当な範囲内で行われる場合には、これを引用することができる(著作権法32条1項)。そして、その要件該当性を判断するには、引用される著作物の内容及び性質、引用の目的、その方法や態様、著作権者に及ぼす影響の程度等の諸事情を総合考慮して、社会通念に照らし判断するのが相当である。

イ 前提事実及び証拠並びに弁論の全趣旨によれば、①原告動画1は、冒頭において「これから公開させて頂く動画は私が不当逮捕された時に通りがったパチスロ系人気YouTuberCさんに撮影されモザイクやボイスチェンジ加工等無しで面白おかしくコラージュされ他動画をSNSへ掲載され約2ヶ月で230万回も再生された動画です。」等のテロップが表示された後、「長文申し訳ございません。動画を開始させて戴きます。」と表示されること、②その後、背景に「当動画はYouTuberCさんにモザイク無しで掲載された動画と同等のものをプライバシー処理した動画です。」と表示された状態で、本件状況が映っていること、③その後、「ご視聴頂きありがとうございます。今後、削除処理の過程や、私の行って来た事 過去の申し立て内容や進捗を公開していければと考えております。 SNS被害ch」とのテロップが表示されていること、④原告動画1は、本件逮捕動画のうち、原告が現行犯逮捕されるなどした本件状況を映したいわば生の映像について引用する一方で、被告が本件状況の補足説明や原告又は警察官の発言内容につきテロップを付すなどした部分については引用していないこと、他方、⑤本件逮捕動画は、遅くとも平成30年9月末頃に、その投稿が削除されており、原告動画1の投稿により、被告に実質的な不利益が具体的に生じたこともうかがわれないこと、以上の事実が認められる。

上記認定事実によれば、原告は、本件逮捕動画が被告によって撮影され編集されたものであることを明記した上、本件逮捕動画を引用しているところ、原告動画1を投稿した目的は、被告がモザイクや音声の加工等を施さないまま、現行犯逮捕された原告の容ぼう等をそのまま晒す本件逮捕動画をYouTube に投稿したことを明らかにするためのものであり、本件逮捕動画は、その被害を明らかにするために必要な限度で利用されたものであり、他方、本件逮捕動画の引用によって被告に実質的な不利益が具体的に生じたこともうかがわれない。

これらの事情を総合考慮すれば、原告動画1において本件逮捕動画を引用することは、公正な慣行に合致するものであり、引用の目的上正当な範囲内で行われたものと認めるのが相当である。

[控訴審同旨]

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/