【共同著作物】共同著作物の定義規定の解説 2/3

 

▶共同著作物(共同著作者性)の要件

 

「共同著作物」といえるためには、次の2つの要件を満たす必要があります:

① 「二人以上の者が共同して創作した著作物」であること。

② 「その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」であること。

以下、順に解説していきます。

 

① 「二人以上の者が共同して創作した著作物」であること。

 

「二人以上の者」とは、自然人(生身の人間のことです)同士の組み合わせに限らず、自然人と法人、法人と法人の組み合わせであっても構いません。著作物を創作する為は事実行為ですので、「法人」が「創作する」ことはあり得ないのですが、例外的に、「法人著作」(15条)に該当する場合には、「法人」も「著作者」と認定されますので、「自然人と法人」、「法人と法人」の共同著作物も考えられます。

 

共同著作物というためには,著作者と目される2人以上の者の各人につき「創作的関与」が認められることが必要です。共同著作物も「著作物」(2条1項1号)である以上、そこに関与する一人ひとりが「著作物を創作する者」すなわち「著作者」(2条1項2号)でなければなりません。そして、「著作物」とは、思想又は感情の創作的表現物(2条1項1号)ですから、自己の思想又は感情を創作的に表現したと評価される程度の活動をした者だけが著作者(共同著作者)と認定されます。つまり、著作物の作成に創作的に関与(寄与)したとは言えない者は著作者としての資格がなく、したがって、共同著作物の創作主体(共同著作者)にもなりえません。

なお、「編集著作物」(12条)及び「データベースの著作物」(12条の2)については、その「素材(情報)の選択又は配列(体系的な構成)によって創作性を有するもの」が著作物として保護されることから、これらの共同著作者については、素材(情報)について創作性のある選択・配列(体系的構成)を行った者(編集者)は誰か、という観点からその認定が行われるものと解されます。

 

一般的に共同著作者にないえない者(著作物の作成に創作的に関与(寄与)していない者)とは、例えば、次のような者が該当すると解されます:

× 単に企画や原案を立案しただけの者、単に創作のアイディアやヒント、助言を提供しただけの者

  (注) ただし、原案やアイディア等がある程度まとまった具体的な表現として提供されたような場合には、出来上がった作品がその「二次的著作物」(2条1項11号)と評価される場合はあり得ます。

× 単なる注文主(発注者や委託者など)

× 補助的な役割(単なる口述筆記、原稿の校正作業、データの収集整理・入力作業など)を果たしたに過ぎない者

 

共同創作の意思の存在(連絡)は必要か。

この点につき、「共同著作物であるための要件は、第一に、二人以上の者が共同して創作した著作物であること、第二に、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないことであり、上記第一の要件である二人以上の者が共同して創作した著作物であることという要件を充足するためには、客観的側面として、各著作者が共同して創作行為を行うこと、主観的側面として、各著作者間に、共同して一つの著作物を創作するという共同意思が存在することが必要である。」とした裁判例(令和4年11月1日知的財産高等裁判所[令和4(ネ)10047])があります。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/