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楽曲の編曲権侵害の成否

 

▶平成15年12月19日東京地方裁判所[平成14(ワ)6709]

(3) 表現上の本質的特徴の同一性

ア 一般に,楽曲に欠くことのできない要素は,旋律(メロディー),和声(ハーモニー)及びリズムの3要素であり,これら3要素の外にテンポや形式等により一体として楽曲が表現されるものであるから,それら楽曲の諸要素を総合して表現上の本質的特徴の同一性を判断すべきである。

もっとも,これらの諸要素のうち,旋律は,単独でも楽曲とすることができるのに対し,これと比較して,和声,リズム,テンポ及び形式等が,一般には,それ単独で楽曲として認識され難く,著作物性を基礎づける要素としての創作性が乏しく,旋律が同一であるのに和声を付したり,リズム,テンポや形式等を変えたりしただけで,原著作物の表現上の本質的な特徴の同一性が失われるとは通常考え難いこととされている。

そして,甲曲は,歌詞を付され,旋律に沿って歌唱されることを想定した歌曲を構成する楽曲である。甲曲の構成は,全16小節を1コーラスとする,比較的短い楽曲であり,後記のとおり,4小節を1フレーズとすると,4フレーズをA-B-C-Aと定式化することができる簡素な形式が採用されている。また,和声も基本3和音による3コードで進行する常とう的な和声が付けられているにとどまる。さらに,甲曲の旋律と類似する楽曲としても,せいぜい1フレーズ程度の旋律しか発見されず,4フレーズの旋律全体の構成が類似する楽曲が発見されていないことからすれば,甲曲の楽曲としての表現上の本質的な特徴は,和声や形式といった要素よりは,主としてその簡素で親しみやすい旋律にあり,特に4フレーズからなる起承転結の組立てという全体的な構成が重要視されるべきである。

よって,甲曲のように,旋律を有する楽曲に関する編曲権侵害の成否の判断において最も重視されるべき要素は,旋律であると解するのが相当であるから,まず,旋律について検討し,その後に楽曲を構成するその余の諸要素について総合的に判断することとする。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/