【二次的著作物】二次的著作物の定義規定の解説 4/4

 

▶翻案著作物

 

「翻案著作物」とは、原著作物に依拠しつつ、そこに表現される主題やストーリー性などの基本的内容・本質的な特徴を受け継ぎながら、新たな創作性を加えて作られる著作物をいいます。「脚色」されたもの、「映画化」されたものも、「翻案著作物」です。例えば、「小説やマンガを脚色したもの」、「脚本を映画化したもの」、「小説をマンガにしたもの」、「マンガを小説にしたもの」、「外国の小説や映画を日本を舞台にしてリメイクしたもの」、「大人向けの小説を児童向けに書き改めたもの」、「学術論文等の長い文章を要約したもの(ダイジェスト版)」、「古典を現代語訳したもの」、「方言を標準語に変えたもの」、「速記文や暗号文を解読したもの」などは、一般的に、この「翻案著作物」に該当すると考えられます。

 

なお、既存の著作物に依拠した場合であっても、そこから単に創作のインスピレーションやヒント、アイディアを得て、当該既存の著作物の「表現上の本質的な特徴を直接感得すること」ができないようなやり方で新たな創作的表現がなされたときには、その新たに創作された著作物は、もはや「二次的著作物」とは言えず、当該既存の著作物とは別個独立した独自の著作物と評価されることになります。

 

[参考]

★言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である。

<平成13年6月28日最高裁判所第一小法廷[平成11(受)922]>

(注) 上記の最高裁の判例では、「言語の著作物」についての「翻案」として判示していますが、既存の著作物への「依拠性」と本質的特徴の「直接感得性」という最高裁の示した要件は、「言語の著作物」以外の著作物にも妥当するものと解されており、さらに、「翻案」だけでなく、「翻訳」・「編曲」・「変形」にも当てはめて考えるようになってきています。非常に重要な判例です。

 

★連載漫画においては、後続の漫画は、先行する漫画と基本的な発想、設定のほか、主人公を始めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴を同じくし、これに新たな筋書を付するとともに、新たな登場人物を追加するなどして作成されるのが通常であって、このような場合には、後続の漫画は、先行する漫画を翻案したものということができるから、先行する漫画を原著作物とする二次的著作物と解される。

<平成9年7月17日 最高裁判所第一小法廷[平成4(オ)1443]>

 

★本件連載漫画は,被上告人が各回ごとの具体的なストーリーを創作し,これを400字詰め原稿用紙30枚から50枚程度の小説形式の原稿にし,上告人において,漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き,おおむねその原稿に依拠して漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作されたというのである。この事実関係によれば,本件連載漫画は被上告人作成の原稿を原著作物とする二次的著作物であるということができる(。)

<平成13年10月25日最高裁判所第一小法廷[平成12(受)798]>

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/