映画の公開中止による監督脚本家の期待権侵害の成否

 

▶令和4年7月29日東京地方裁判所[令和2(ワ)22324]▶令和5年2月7日知的財産高等裁判所[令和4(ネ)10090等]

9 争点5(本件映画の公開中止による原告X1の期待権侵害の成否)

原告X1は、本件映画の公開につき法的保護に値する期待権を有していたところ、被告O映画らが【控訴人X1】に対する十分な説明なく、一方的に本件映画の公開を中止したことにより、同期待権が侵害された旨主張する。

そこで検討するに、前記前提事実のとおり、【被控訴人P映画は、合計207万3000円を支払って、控訴人X1から、本件映画を買い取るとともに、本件映画に係る著作権を譲り受けたものである】。そのため、原告X1が本件映画の公開を期待していたとしても、自らの判断で本件映画の著作権を【被控訴人P映画に】譲渡している以上、本件映画を利用できるのは著作権者又はその許諾を得た者に限られることは明らかである。そうすると、原告X1の上記にいう期待は、事実上のものにすぎず、法律上保護される利益であるとまで認めることはできない。

したがって、原告X1の主張は、採用することができない。

[控訴審同旨]

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