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【著作権法の目的】著作権制度はなぜ必要なのでしょうか?

 

著作権法の第1条は、「目的」という見出しのもとで、次のように規定しています:

 

「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」

 

著作権法第1条は、著作権法の目的を明示するだけでなく、わが国著作権法の解釈や制度運用の基本的な指針を示しています。

ここで、「著作者の権利」とは、「著作者人格権」と「著作権」(いわゆる著作財産権)を意味します(17条1項参照)。「これに隣接する権利」とは、実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者の権利(主として実演家人格権や著作隣接権)を意味します(89条参照)。

一方、「公正な利用」とは、著作者の権利等は無制限でないこと、つまり、著作権等は一定の範囲で合理的な制限が加えられていること(その保護期間内であっても一定の社会的自由利用が認められていること)(30条~50条)、文化庁長官の裁定によって著作物を利用する道が開かれていること(67条~70条)、著作権等には保護期間(存続期間)が定められ、著作権等が「有限」な権利であること(保護期間の経過後は、著作物等は社会の共有財産となること)(51条~58条)などを念頭に置いたものです。

 

著作権法の目的は、第一に、著作者、著作権者、実演家、著作隣接権者の経済的又は人格的利益を保護することにあります。つまり、著作権法は、著作者等の利益を経済的な又は人格的な側面から保護することで、その労力に報い、彼らの創作活動に対するインセンティブを高め、もってより有用な「文化的所産」が世の中に提示・提供されることを促し、わが国の社会全体が文化的に豊かになることを期待します。

しかし、その一方で、著作物等の文化的所産の公衆による「公正な利用」も確保されなければなりません。創作者(権利者)のみを保護し、著作物等の利用を欲する者(利用者である一般大衆)の利益が全く考慮されないのであれば、社会が全体として文化的に豊かになることは難しいでしょう。

あらゆる創作の場面を想定しても、おそらくクリエーターやアーティストが「全くの無から有を生み出す」ことは稀で、程度の違いはあっても、また、意識しているか否かにかかわらず、彼らは、大なり小なり、先人たちの「表現物(文化的所産)」に影響を受け、そこからインスピレーションを与えられて、自らの創作活動を営みます。そして、今度は、その彼らの創作した表現物が何年か、何十年か先のクリエーターやアーティストたちにとっての素晴らしいお手本となっているかもしれません。つまり、創作者(権利者)も一面では常に他人の著作物等の利用者であり、”創作者(権利者)vs利用者”といった概念は決して絶対的なものではなく、相対的なものにすぎないということです。「公正な利用」を確保することは、少し見方を変えれば、創作者(権利者)がよりよい創作活動を営む土台を形成することにもつながるのです。

 

著作者等の権利(利益)の保護と公衆による著作物等の公正な利用(自由利用)とのバランスを図りながら、わが国の「文化の発展」を促進していくことが、わが国の著作権法の究極的な目的なのです。

WIPO著作権条約の前文には、「著作権による保護が、文学的及び美術的著作物の創作に対するインセンティブとして、特に重要であることを強調し、…著作者の権利と、とりわけ教育、研究そして情報へのアクセスのような、広範な公共の利益との間の均衡を維持する必要性のあることを認めて」とあり、著作権等による保護は社会公共の利益との「均衡」(バランス)の上に成り立っているということが国際的な理解にもなっていることを窺わせます。

 

なお、著作権と同じく「知的財産権」の分野に属する特許権等の「産業財産権」は、その名が示すように、究極的には「産業の発達」を目的としています(特許法1条等参照)。標語風に言えば、〝文化促進のための著作権、産業促進のための特許権〟というわけです。

 

【参考】

☆著作権法は,著作物の利用について,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に独占的な権利を認めるとともに,その独占的な権利と国民の文化的生活の自由との調和を図る趣旨で,著作権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,独占的な権利の及ぶ範囲,限界を明らかにしている。

<平成23年12月8日最高裁判所第一小法廷[平成21(受)602]>

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/