プログラム著作物の貸与権侵害を認定した事例 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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プログラム著作物の貸与権侵害を認定した事例

 

▶平成16年06月18日東京地方裁判所[平成14(ワ)15938]

イ 以上の各事実を総合すると,被告NTTリースは,訴外財団以外の者に対して原告の承諾を得ないで貸与することを禁止されている本件各プログラムにつき,原告の承諾を得ないまま,被告ビリングソリューション,東北通信及びテルウェル西日本(以下,この3社を総称して「被告ビリングソリューション等」という。)に貸与したものと認められ,原告の本件各プログラムの貸与権(著作権法26条の3)を侵害したものということができる。

したがって,被告NTTリースが被告ビリングソリューションに本件各プログラムを使用させた行為につき貸与権侵害をいう原告の主張は,理由がある。

ウ 被告らは,この点に関し,著作権法26条の3に定める貸与権は,「公衆」に対する提供を伴うことを要するものであり,訴外財団から被告ビリングソリューション等への貸与先の変更は,「公衆」の要件を満たさないから,貸与権侵害は成立しないと主張する。

そこで判断するに,著作権法26条の3にいう「公衆」については,同法2条5項において特定かつ多数の者を含むものとされているところ,特定かつ少数の者のみが貸与の相手方になるような場合は,貸与権を侵害するものではないが,少数であっても不特定の者が貸与の相手方となる場合には,同法26条の3にいう「公衆」に対する提供があったものとして,貸与権侵害が成立するというべきである。

この点,本件のように,プログラムの著作物について,リース業者がリース料を得て当該著作物を貸与する行為は,不特定の者に対する提供行為と解すべきものである。けだし,「特定」というのは,貸与者と被貸与者との間に人的な結合関係が存在することを意味するものと解されるところ,リース会社にとってのリース先(すなわちユーザ)は,専ら営業行為の対象であって,いかなる意味においても人的な結合関係を有する関係と評価することはできないからである(被告ら自身,プログラム・プロダクトに関するファイナンスリース契約は,経済的にはユーザに対する金融であり,場合によっては,リース業者はリース目的物を換価したり他の者にリース契約を承継させるものであることを認めている。)。

本件においては,被告ビリングソリューション,東北通信及びテルウェル西日本は,いずれもNTTグループの企業であるにしても,リース業者である被告NTTリースとの関係では単なるリース先(ユーザ)であるから,被告NTTリースが被告ビリングソリューション等に対して本件各プログラムを貸与した行為は,公衆に対する提供に当たり,原告の貸与権を侵害するものというべきである。

仮に,被告らの主張するように,訴外財団と被告ビリングソリューション等との間に両者を同一視できるような密接な関係があったとしても,それは,原告の承諾を得ないでリース先を変更することが本件各使用権設定契約違反とならない特段の事情が存在するという主張としてはともかく(本件においては,そのような特段の事情があるということはできないが),プログラムの貸与先であるリース先(ユーザ)が貸与者であるリース業者との関係で「公衆」に該当することを否定する事情とは,なり得ないものである。

上記のとおり,被告ビリングソリューション等が著作権法著作権法26条の3にいう「公衆」に該当しない旨をいう被告らの主張は,採用できない。

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