「映画の著作物」における固定性の要件の意義

 

▶平成13年03月29日大阪高等裁判所[平成11(ネ)3484]

右の立法経過に照らすと、ベルヌ条約が、映画の著作物に関し、創作性を他の一般著作物と同様のものとし、次に、著作物性に重点を置いた影像のモンタージュやカット等の手法的な類似性によって映画類似の著作物を捉えてテレビジョン著作物をも含めて固定のいかんにかかわらず映画に類似する方法で表現されているものが映画としての保護の対象となるが、国内法で固定を要求することができるものとし、現行著作権法がこれに基づきテレビの生放送番組のように放送と同時に消えて行く性格のものを映画の著作物としては保護しないということにして固定の要件を規定したのであるから、法2条3項は、第一に、創作性につき他の一般著作物と同様のものとし、第二に、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で「表現され」ることを求めているのであって、表現の内容たる「思想・感情」や表現物の「利用態様」における映画との類似性を求めていないというべきである(この点は、法2条4項[写真の著作物の定義]が「この法律にいう『写真の著作物』には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含む」として映画の著作物に関する法2条3項と異なり「製作方法」の類似性に着目した表現で規定して区分けされていることによっても裏付けられる。)。そして、第三に、表現が「物に固定」されることは、テレビの生放送番組のように放送と同時に消えて行く性格のものを映画の著作物として保護しないということで要件とされたのであるから、一定の内容の影像が常に一定の順序で再生される状態で固定されるというような特別の態様を要求するものでないことは明らかであり、法2条1項14号にいう「録画」の定義としての「影像を連続して物に固定」するのとは異なるというべきである。

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