弁護士会に対する懲戒請求書の著作物性を認めた事例

 

▶令和3年4月14日東京地方裁判所[令和2(ワ)4481等]▶令和3年12月22日知的財産高等裁判所[令和3(ネ)10046]

1 争点1-1(本件懲戒請求書の著作物性)について

(1) 本件懲戒請求書は,前記前提事実のとおり,原告が,第二東京弁護士会に対し,弁護士であるYにはAの出国及びブログ記事における発言について弁護士法56条の懲戒事由があるとして,同法58条1項に基づき懲戒の請求をするために提出した文書である。

本件懲戒請求書の構成,内容等をみると,同請求書は,懲戒請求書である旨の表示,請求の日付,請求の宛先,請求者の氏名,対象弁護士の氏名,懲戒請求の趣旨,懲戒請求の理由などが記載され,その中には懲戒請求書という文書の性質上,当然に記載すべき定型的な事項も含まれる。

しかし,懲戒請求の理由については,その内容が一義的かつ形式的に定まるものではなく,その構成においても様々な選択肢があり得るところ,本件懲戒請求書は,本件記事1及び2の一部の引用及びこれに対する評価,他の弁護士に対する懲戒請求の理由の引用,Yに対する懲戒理由の説明並びに結論から構成されるものであり,その構成や論旨の展開には作成者である原告の工夫が見られ,その個性が表出しているということができる。

また,懲戒請求の理由における記載内容についても,本件懲戒請求書には単に懲戒理由となる事実関係が記載されているにとどまらず,弁護人には被告人の管理監督義務があるという自らの解釈,弁護人の関与なしに被告人が逃亡し得るのかという自らの疑問,Yの発言が【『長期の拘留』】を助長するという自らの意見,綱紀委員会の調査を求める事項などが70行(1行35文字)にわたり記載されており,その表現内容・方法等には作成者である原告の個性が発揮されているということができる。

そうすると,本件懲戒請求書は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものであって,著作権法2条1項1号に規定する「著作物」に該当するというべきである。

[控訴審同旨]

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