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名誉声望保持権の侵害(法113条11項)を認定した事例

 

▶令和5年6月9日東京地方裁判所[令和2(ワ)12774]▶令和6年1月30日知的財産高等裁判所[令和5(ネ)10075]

7 争点7(名誉声望保持権の侵害の成否等)について

著作権法113条11項は、「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」について、著作者人格権を侵害する行為とみなすと規定しているところ、同項の「名誉又は声望」は,社会的な名誉又は声望であると解される。そこで、著作物を掲載した記事の投稿が「名誉又は声望を害する方法」に該当するか否かについては、著作者の社会的評価の低下をもたらすような利用であるか否かを基準として判断するのが相当である。

【前記6(1)のとおり、本件原画像は、被控訴人が、東日本大震災による被災地である南相馬市の伊勢大御神上大神宮を訪れた際に、同所に設置された線量計において、被控訴人が持参したポケット線量計の値より低い値が表示されていることを端的に映像にするため、これらの線量計を上下に配置して撮影した動画から作成した写真である。

しかるところ、前提事実並びに下記の原判決別紙一覧表の「本件記事等番号」欄の「名誉・信用毀損/侮辱表現等」によると、控訴人は、「PTSD解離性悪行の数々…■-頭隠して尻尾隠さず被災地に行って体調不良中」、「ストレスがかかると正しい判断ができなくなり奇天烈な行動をするのがPTSD解離人格です。■」、「キレてデタラメ行動をし自爆するのがPTSD解離人格です。■」、「■重大なのは暴走するこころの汚染です。」、「PTSD解離ネットストーカーによる悪意拡散の除染中■」等の文言に織り交ぜて、本件複製画像を掲載した記事を繰り返し投稿していること(「■」は本件複製画像が挿入されている箇所を示す。)が認められる。

これらの投稿は、本来PTSDやストーカー行為とは何ら関係のない被災地における線量計の数値の差異を写した本件原画像を、上記文言と織り交ぜて繰り返し利用することにより、あたかも、見る者をして、本件原画像がPTSD解離にり患している又はストーカー行為をしている者ないしはそれらの行為と何らかの関連性を有する奇異なものであるかのように認識させ得るものであるといえ、本件原画像の著作者である被控訴人の社会的な評価の低下をもたらすものであると認められる。】

したがって、被告Bは、上記の各投稿によって、著作者である原告の名誉又は声望を害する方法によりその著作物である本件原画像を利用したものであって、これは、本件原画像に係る原告の著作者人格権を侵害する行為であるとみなされる。

他方で、***、***及び***の各記事等については、上記のような文言を記載しておらず、単に、本件複製画像に創作性がなく著作物に当たらないとの趣旨のコメントとともに本件複製画像を掲載した記事を投稿したにすぎないから、本件原画像の著作者である原告の社会的な評価の低下をもたらすような利用であるとはいえない。よって、これらの各記事等の投稿に係る原告の主張は理由がない。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/