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和紙を利用した屏風の二次的著作物性を認定した事例

 

▶令和5年3月15日東京地方裁判所[平成30(ワ)39895等]▶令和5年12月25日知的財産高等裁判所[令和5(ネ)10038]

(2) 本件展示物15から20は、約65cm×約180cmや約74cm×約100cmの大きさの本件染描紙15から20について、【スキャナで読み込める約53cm×80cmの大きさ】に切り出し、これをスキャナで読み込んで、そのデータに調整を施し、それを印刷したものであり、縦約450cm×横約704cmの大きさの8曲の屏風様のものである。そして、本件展示物15から20は、本件染描紙15から20と比較して、全体的に青系の色彩が強調され、また、刷毛のあとや染色の境目などの輪郭が鋭く明確化されている。

本件展示物15から20は、「Bアートワークス/天空図屏風シリーズ」と題する一連の作品として、羽田空港第1旅客ターミナルビル南ウイング及び北ウイングの各2階の国内線出発ロビーに、6か所の各保安検査場の上方の壁面地上約10.3mから約15mの高さの位置に、被告Bの指定した一回り大きい茶色のアルミ複合版製の下地とともに設置され、昼間は、各展示場所の上方の天井にそれぞれ存在する天窓から日差しが射し込むほか、本件展示物15から20が展示されている各壁面の正面付近の各床には、本件展示物15から20について、本件説明とともに、それぞれ別紙本件展示物一覧記載15から20の各和歌(原典及び口語訳)が記載された説明書きが埋め込まれている。本件展示物15から20は、壁面にそれぞれ一回り大きい下地とともに設置されていて、それ自体でそれぞれが作品と認識できるものであり、それらが空港という空間や和歌と一体化して初めて作品として成立しているものではない。もっとも、本件展示物15から20は、「空」を主題とし、空港、内装の特性を考慮した上で、日本画の伝統である8曲の屏風様式や、天窓から射し込む自然光の効果も取り入れて、上記各和歌と【組み合わせて作品に仕立て上げられたと認められる。】

 

[控訴審]

⑵ 翻案について

翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決参照)。

これを本件において検討すると、被控訴人Y’が制作した本件展示物15から20は、本件染描紙15から20に依拠し、原判決別紙染描紙(15~20)一覧において、四角い枠を付したものとして示した写真における、四角い枠で囲んだ部分を利用して、補正した上で引用した原判決で認定した制作過程を経て制作されたものと認められ、また、本件展示物15から20は、作品の全体像として、「Yアートワークス/天空図屏風シリーズ」と題する一連の作品として、屏風様式を取り入れ、上記作品より一回り大きい茶色のアルミ複合版製の下地とともに設置され、晴天の日の日中は、各展示場の上方の天井にそれぞれ存在する天窓から日差しが差し込むように配置され、本件展示物15から20が展示されている各壁面の正面付近の各床には、本件展示物15から20について、本件説明とともに、それぞれ各和歌(原典及び口語訳)が記載された説明書きが埋め込まれていて、これらの構成要素が組み合わされて仕立てあげられた作品であることが認められるから、本件染描紙15から20の具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現するものと認められるものの、本件展示物15から20の屏風の部分の表現と本件染描紙15から20の上記四角い枠で囲んだ部分の表現とを対比すると、前者は後者と比較して、全体的に青系の色彩が強調され、また、刷毛のあとや染色の境目などの輪郭が鋭く明確化されているなど、両者は色合いや色調に多少の相違が認められるものの、刷毛状の模様、にじみ具合及びこれらの構成や配置は極めて類似しているから、本件展示物15から20に接する者が本件染描紙15から20の表現上の本質的特徴を直接感得することが十分に可能であるということができる。

したがって、本件展示物15から20は、本件染描紙15から20を翻案したものであると認めるのが相当である。

 

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