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著作者の名誉声望毀損行為(法113条11項)の認定事例

 

▶平成25年7月16日東京地方裁判所[平成24(ワ)24571]▶平成25年12月11日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10064]

1 争点(1)(本件行為1についての違法性及び責任)について

(1) 本件似顔絵は,原告が昭和天皇及び今上天皇の似顔絵を創作的に描いたものであって,美術の範囲に属するものであるから,原告は,これにつき著作権及び著作者人格権を有するものと認められる。

(2) 前記前提事実(6)のとおり,被告が本件似顔絵の写真を投稿した画像投稿サイトの投稿内容は,被告により特にブロックされた者以外の者において自由に閲覧することができる設定とされていたところ,被告は,これに上記写真をアップロードしたのであるから(本件行為1),これにより,原告が本件似顔絵について有する著作権(公衆送信権)を侵害したものというべきである。

(3) また,前記前提事実(4)によれば,被告は,自作自演の投稿であったにもかかわらず,被告が本件似顔絵を入手した経緯については触れることなく,あたかも,被告が本件サイト上に「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。」「陛下プロジェクト」なる企画を立ち上げ,プロのクリエーターに天皇の似顔絵を描いて投稿するよう募ったところ,原告がその趣旨に賛同して本件似顔絵を2回にわたり投稿してきたかのような外形を整えて,本件似顔絵の写真を画像投稿サイトにアップロードしたものである(本件行為1)。本件似顔絵には,「C様へ」及び「A」という原告の自筆のサインがされていたところ,「C様」は,被告が本件サイトにおいて使用していたハンドルネームであった。

上記の企画は,一般人からみた場合,被告の意図にかかわりなく,一定の政治的傾向ないし思想的立場に基づくものとの評価を受ける可能性が大きいものであり,このような企画に,プロの漫画家が,自己の筆名を明らかにして2回にわたり天皇の似顔絵を投稿することは,一般人からみて,当該漫画家が上記の政治的傾向ないし思想的立場に強く共鳴,賛同しているとの評価を受け得る行為である。しかも,被告は,本件サイトに,原告の筆名のみならず,第二次世界大戦時の日本を舞台とする『特攻の島』という作品名も摘示して,上記画像投稿サイト【上の上記写真】へのリンク先を掲示したものである。

そうすると,本件行為1は,原告やその作品がこのような政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって,原告の名誉又は声望を害する方法により本件似顔絵を利用したものとして,原告の著作者人格権を侵害するものとみなされるということができる。

(4) 以上のとおり,本件行為1は,原告の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権を違法に侵害するものであり,被告にはそのことについての故意があったと認められる。

【この点に関し,控訴人は,被控訴人が自らの作品について著作権フリー化の姿勢を明言し,これまで控訴人などが同様のイラストを無断でアップロードしたことを容認していたから,控訴人には著作権侵害の故意はないとも主張する。しかしながら,被控訴人は,自ら制作した特定の作品についてのみ他人による自由な二次利用を許諾していたにすぎず,被控訴人が,本件似顔絵を含め,自ら制作した作品一切につき著作権を行使しないことを表明した事実は認められないし,自ら制作したイラストの無断アップロードに対してその都度異議を述べなかったからといって,直ちに本件似顔絵の写真のアップロードを黙認していたと解することはできないから,かかる控訴人の主張も,採用することはできない。】

[控訴審同旨]

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/