将来発生する著作権に基づく差止の可否(新聞の場合)
▶平成6年10月27日東京高等裁判所[平成6年10月27日]
次に、将来の控訴人文書の作成・頒布行為に対する差止めの可否について検討する。
1 著作権法112条は、著作権を侵害するおそれがある者に対し、その侵害の予防を請求することができる旨規定しているから、既に著作権が発生している場合には、たとえ侵害行為自体はいまだなされていない段階においても、予測される侵害に対する予防を請求することができることはいうまでもない。
問題は、請求の根拠となる著作物が口頭弁論終結時に存在しておらず、将来発生することとなる場合にも将来の給付の訴えとして差止請求を求めることができるかという点にある。
民事訴訟法226条[注:現135条。以下同じ]は、将来の給付の訴えについて、予めその請求をする必要がある場合にはこれを認めているが、この訴えが認められるためには、その前提として、権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係(請求の基礎たる関係)が存在していることが必要であり、したがって、将来発生する著作権に基づく差止請求を無条件に認めることはできない。
しかし、新聞の場合について考えてみると、当該新聞が将来も継続して、これまでと同様の一定の編集方針に基づく素材の選択・配列を行い、これにより創作性を有する編集著作物として発行される蓋然性が高く、他方、これまで当該新聞の発行毎に編集著作権侵害行為が継続的に行われてきており、将来発行される新聞についてもこれまでと同様の編集著作権侵害行為が行われることが予測されるといった事情が存する場合には、著作権法112条、民事訴訟法226条の各規定の趣旨、並びに新聞は短い間隔で定期的に継続反復して発行されるものであり、発行による著作権の発生をまってその侵害責任を問うのでは、実質的に権利者の救済が図れないこと、新聞においては、取り上げられる具体的な素材自体が異なっても、一定の編集方針が将来的に変更されないことが確実であれば、編集著作物性を有するものと扱うことによって法律関係の錯雑を招いたり、当事者間の衡平が害されたりするおそれがあるとは認め難いことに鑑み、将来の給付請求として、当該新聞が発行されることを条件として、予測される侵害行為に対する予防を請求することができるものと解するのが相当である。
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