氏名表示権に消滅時効はあるか

 

▶平成17年6月23日東京地方裁判所[平成15(ワ)13385]

被告は,原告の氏名表示権に基づく請求権が,消滅時効ないし権利失効の原則により消滅しており,給付の訴えを提起してもその請求が認められないのであるから,確認の訴えが認められることはないと主張する。

しかし,原告の氏名表示権に基づく請求権が,消滅時効ないし権利失効の原則により消滅していないことは,後記のとおりであり,被告の主張はその前提を欠き,理由がない。そもそも,著作者人格権は,著作者の一身に専属し,譲渡することが許されないものである(著作権法59条)から,原告が本件各銅像の著作者であるとすれば有するはずの氏名表示権が消滅することはないのである。

(略)

被告は,氏名表示権そのものは消滅時効にかからないとしても,本件通知請求や謝罪広告請求は単純なる債権であって時効によって消滅する,と主張する。

しかし,著作者人格権には譲渡性及び相続性がなく,保護期間の定めもないことからすれば,本件各銅像についての原告の著作者人格権(氏名表示権)が,消滅時効にかかることなく,存続することは明らかである。そして,被告も,本件各銅像が一般に展示され続けることを知りながら,本件各銅像に被告が制作者であるとの表示を刻したものであり,このことにより,現在において,本件各銅像が一般に展示され,原告の氏名表示権の侵害が継続しているのである。

以上によれば,被告の行為に起因して現在でも原告の氏名表示権に対する侵害が継続しているのであるから,原告の被告に対する本件通知請求権等が,時効により消滅すると解することはできない。

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