『アメリカ連邦著作権法における”著作物”とは~著作物の具体例~4/7』

 

(5) 絵画、図形及び彫刻の著作物

 

「絵画、図形及び彫刻の著作物」のカテゴリーに入るものにとしては、次のものがあります(101条)。なお、平面的か立体的かは問いません。

純粋美術作品

グラフィックアート作品

応用美術作品

写真

版画

美術複製品

地図、地球儀、海図、図表、模型、建築設計図のような技術的な図面

美術工芸品

所定の絵画的、図形的又は彫刻的な特徴を取り込んだ実用品のデザイン

 

以上は、法律の条文(定義規定)に明記されている例ですが、次のものも、一般的には、「絵画、図形及び彫刻の著作物」のカテゴリーに入るものと解されます(連邦著作権局の公開資料による):広告、ラベル、造花、Tシャツなどについている絵柄、ステッカー、風刺漫画、続き漫画(新聞等におけるいわゆる4コマ漫画)、コラージュ、人形、壁画、ゲーム(後述)、パズル、グリーティングカード、ポストカード、ホログラム、宝石のデザイン、モザイク画、刺繍、モンタージュ写真、ポスター、レコードジャケット、レリーフ、リトグラフ(石版画)、ステンドグラスデザイン、織物・レースのデザイン、タペストリーなど。

 

(参考:「絵画、図形及び彫刻の著作物」の定義)

“Pictorial, graphic, and sculptural works” include two-dimensional and three-dimensional works of fine, graphic, and applied art, photographs, prints and art reproductions, maps, globes, charts, diagrams, models, and technical drawings, including architectural plans. Such works shall include works of artistic craftsmanship insofar as their form but not their mechanical or utilitarian aspects are concerned; the design of a useful article, as defined in this section, shall be considered a pictorial, graphic, or sculptural work only if, and only to the extent that, such design incorporates pictorial, graphic, or sculptural features that can be identified separately from, and are capable of existing independently of, the utilitarian aspects of the article.

「絵画、図形及び彫刻の著作物」には、平面的な[二次元の]及び立体的な[三次元の]純粋美術、グラフィックアート、応用美術、写真、版画、美術複製、地図、地球儀、海図、図表、模型、及び技術的な図面(建築設計図を含む。)を含む。そのような著作物には、その機械的な[構造的な]若しくは実用的な側面ではなく、その形状[形態]に関する限り、美術工芸の著作物を含むものとする。本条で定義されている実用品のデザインは、当該デザインが、当該物品の実用的な側面とは別個に識別することができ、かつ、そのような側面から独立して存在することが可能である、絵画的、図形的又は彫刻的な特徴を取り込んでいる場合にのみ、その限りにおいて、絵画、図形又は彫刻の著作物とみなされる。

 

(参考:「実用品」の定義)

A “useful article” is an article having an intrinsic utilitarian function that is not merely to portray the appearance of the article or to convey information. An article that is normally a part of a useful article is considered a “useful article”.

「実用品」とは、単にその外観を示し又は情報を伝えるためだけではない、本来的に実用的な機能を備えた物品をいう。通常の場合実用品の一部である物品は、「実用品」とみなされる。

 

「実用品」(a useful article)とは、「単にその外観を示し又は情報を伝えるためだけではない、本来的に実用的な機能を備えた物品」をいいます(上記定義参照)。例えば、洋服や家具、機械、食器類、照明器具、乗り物などです。また、「通常の場合実用品の一部である物品」も「実用品」とみなされます。例えば、乗り物に取り付けられる装飾用の車輪カバーなど。

著作権による保護は、このような実用品の「機械的又は実用的な側面」(mechanical or utilitarian aspects)には及びません。したがって、機械的又は実用的な側面のみに特徴を有する「実用品のデザイン」は、著作権による保護の射程範囲外ということになります(つまり、「著作物」に該当しない)。しかしながら、実用品のデザインが、「当該物品の実用的な側面とは別個に識別することができ、かつ、そのような側面から独立して存在することが可能である、絵画的、図形的又は彫刻的な特徴を取り込んでいる場合にのみ、その限りにおいて」、例外的に、絵画、図形又は彫刻の著作物に該当するものとして、著作権法上の保護を受け得ることになります。例えば、椅子の背もたれ部分に「彫刻」が施されている場合や、食器皿に花の「レリーフ」が浮き出ている場合、これらの「彫刻」や「レリーフ」は著作権によって保護される可能性がありますが、その椅子自体のデザイン、その食器皿自体のデザインは、通常、著作権によって保護されることはありません。つまり、「実用品のデザイン」が著作権法によって保護される場合、著作権が及ぶのは、あくまで「絵画的、図形的又は彫刻的な特徴を取り込んでいる」部分(上述の例で言えば、「彫刻」を施した部分、「レリーフ」が現われている部分)に限られ、その実用品全体の(形態の)デザインに及ぶことはないということです。もっとも、著作権による要保護性が認められない工業(産業)デザイン(意匠)と著作権による要保護性の認められる応用美術作品との境界線をどこで引くのかの問題は、必ずしも明確なものではありません(The line between uncopyrightable works of industrial design and copyrightable works of applied art is not always clear.)。平面的な絵画や図形、グラフィックデザインが、例えば、洋服の生地や壁紙、容器類などの上にプリントされている場合には、その絵画や図形等は、著作権による要保護性は認められると解されますが、一方、その実用品自体のデザインについては、上述しましたように、それがいかに機能的(実用的)に優れたものであっても、著作権による保護を受けることはできないと解されます。

(注) 連邦著作権局の実務的な取り扱いとして、著作者の作成に係る「絵画、図形及び彫刻の著作物」であれば、それが実用新案や意匠に関わる法律によって保護されるか否かにかかわらず、著作権登録を認めています(The availability of protection or grant of protection under the law for a utility or design patent will not affect the registrability of a claim in an original work of pictorial, graphic, or sculptural authorship.-規則§202.10(a)参照)。

 

「ゲーム」について(連邦著作権局の取扱い)

著作権は、「ゲーム」のやり方(アイディア)や名前(タイトル)を保護しません。したがって、ある新しい「ゲーム」が考案され公表された場合に、著作権法によっては、他の者がその「ゲーム」のアイディアをもとに別のゲームを開発することを禁止することはできません。著作権法は、具体的な「表現」を保護するものだからです。

ある「ゲーム」が考案され、それとの関係で、何らかの「表現物」、例えば、そのゲームの遊び方やルールを記述したテキスト(「解説書」など)や、そのゲームがボード(台)や容器を使ってするものであれば、そのボードや容器に描かれている絵やグラフィックデザインに、「(著作物性が認められる程度に)十分な量の言語的又は絵画的表現」(a sufficient amount of literary or pictorial expression)が含まれている場合には、その表現部分に応じて、当該「ゲーム」のアメリカ著作権局への登録を容認しているようです。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/