有名デザイナーのトートバッグ等の(美術)著作物性を否定した事例
▶令和元年6月18日東京地方裁判所[平成29(ワ)31572]
原告商品1ないし6に著作物性が認められるかについて
⑴ 原告らは,原告商品1ないし6の個々の商品のデザインは創作性の程度が高いから著作物性が認められ,被告商品は原告商品1ないし6を複製ないし翻案したものであるから,原告らの著作権(複製権又は翻案権)を侵害する旨主張する。
⑵ 原告商品1ないし6は,ショルダーバッグ,携帯用化粧道具入れ,リュックサック及びトートバッグであり,いずれも物品を持ち運ぶという実用に供される目的で同一の製品が多数製作されたものであると認められる。
著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(同法2条1項1号)と規定しているところ,その定義や著作権法の目的(同法1条)等に照らし,実用目的で工業的に製作された製品について,その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,その特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できないものは,「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」ということはできず著作物として保護されないが,上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合があると解される。
⑶ これを原告商品1ないし6についてみるに,前記(2)のとおり,原告商品1ないし6は,物品を持ち運ぶという実用に供されることが想定されて多数製作されたものである。
そして,原告らが美的鑑賞の対象となる美的特性を備える部分と主張する原告商品1ないし6の本件形態1は,鞄の表面に一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースが2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるように配置され,これが中に入れる荷物の形状に応じてピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき,荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形するという特徴を有するものである。ここで,中に入れる荷物に応じて外形が立体的に変形すること自体は物品を持ち運ぶという鞄としての実用目的に応じた構成そのものといえるものであるところ,原告商品における荷物の形状に応じてピースの境界部分が折れ曲がることによってさまざまな角度が付き,鞄の外観が変形する程度に照らせば,機能的にはその変化等は物品を持ち運ぶために鞄が変形しているといえる範囲の変化であるといえる。上記の特徴は,著作物性を判断するに当たっては,実用目的で使用するためのものといえる特徴の範囲内というべきものであり,原告商品において,実用目的で使用するための特徴から離れ,その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備えた部分を把握することはできないとするのが相当である。
したがって,原告商品1ないし6は美術の著作物又はそれと客観的に同一なものとみることができず,著作物性は認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告らの著作権侵害に基づく請求には理由がない。
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