Tシャツの模様として制作された図柄(原画)の(美術)著作物性を認めた事例

 

▶昭和56年04月20日東京地方裁判所[昭和51(ワ)10039]

四 三に説示した著作権法による応用美術の保護についての解釈を前提に、本件原画が著作権法上美術の著作物といえるか否かにつき判断する。

1 証人Aの証言、同証言により真正に成立したと認められる(証拠)及び本件口頭弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。

(一)Aは、原告のパートナーの一員としてカリフオルニア州の原告のオフイスにおいて原告の宣伝用ポスターのデザイン、原告が販売するテイーシヤツに模様として印刷する図案の制作等の職務に従事しているものであり、その職務を果たすために、種々の図案を制作するものであるが、制作の当初においては、使用目的を特に決めずに鉛筆で自由にスケツチを描き、次に多数のスケツチの中から原告が販売するテイーシヤツに模様として印刷するのに適したもの、あるいは原告の宣伝広告用のポスターに適したもの、又は自己の作品として後記の芸術祭や個展などに展示するのに適したもの等をA自ら選択し、テイーシヤツに模様として印刷するのに適したものはテイーシヤツ用の原画に仕上げるというように最後にそれぞれの目的に合うように仕上げをする。

本件原画も、Aが、このようにして描いた多くのスケツチの中から原告が販売するテイーシヤツに模様として印刷するのに適したものとして自ら選択した一つのスケツチを基にして、テイーシヤツに模様として印刷するための原画として仕上げたものである。

(二)Aは、アメリカ合衆国カリフオルニア州オレンジ郡美術協会の会員であり、その作品は四〇数年の歴史を有し毎年カリフオルニア州ラグナビーチで開催されている芸術祭のシルク・スクリーン部門においてここ数年連続して展示される等カリフオルニア州においてシルク・スクリーン部門のデザイナーとしてその実力が評価されている。

2 証人Aの証言により本件原画と同様にAにより制作され原告によりテイーシヤツに模様として印刷された図案の原画と認められる(証拠)(以下、この原画を「原画甲」という。)によれば、原画甲は、上部に「go For 1t」の文字を配し、左下方に花の模様を、中心にサーフアーのスピード感あふれる波乗りの姿を描いたもので、全体として十分躍動感を感じさせる図案であり、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、客観的、外形的にみて、テイーシヤツに模様として印刷するという実用目的のために美の表現において実質的制約を受けることなく、専ら美の表現を追求して制作されたものと認められる。したがつて、原画甲は、前記三に説示したところにより、純粋美術としての絵画と同視しうるものと認められ、著作権法上の美術の著作物に該当するということができる。

3 証人Aの証言及び本件口頭弁論の全趣旨により原画甲、本件原画その他多数のA制作のテイーシヤツ用の図案を複製したポスターと認められる(証拠)及び同証人の証言によれば、本件原画は、原画甲と同種類のものであり、下方に花の模様を、左右両側にイルカの躍動的な動きを配置し、中心に波にのまれそうになりながらバランスをとろうとしているサーフアーの瞬間的な姿を描いたもので、全体として十分躍動感を感じさせる図案であり、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、客観的、外形的にみて、テイーシヤツに模様として印刷するという実用目的のために美の表現において実質的制約を受けることなく、専ら美の表現を追求して制作されたものと認められる。したがつて、本件原画は、前記三に説示したところにより、原画甲同様、純粋美術としての絵画と同視しうるものと認められ、著作権法上の美術の著作物に該当するということができる。すなわち、本件原画はテイーシヤツに模様として印刷することを目的として制作されたものではあるが、わが国の著作権法上美術の著作物として客観的に著作物性を有するものであると認められる。

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