爆  笑よく読まれています

 

レシピブックの編集著作権の侵害性が問題となった事例

 

▶令和2年1月27日大阪地方裁判所[平成29(ワ)12572]▶令和3年1月21日大阪高等裁判所[令和2(ネ)597]

1 原告制作物2に係る請求について(複製の有無)

(1) データベースを除く編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,著作物として保護される(著作権法12条1項)。編集著作物においては,素材の選択又は配列によって具現された編集方法が保護の対象となるのであって,具体的な編集物を離れた,編集方法それ自体はアイデアであって保護の対象とはならない。したがって,具体的な配列を離れた配置方針や分類が類似していても,それは表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分であって,編集著作物の複製権を侵害しないというべきである。

(2) 証拠によれば,原告制作物2及び被告制作物2は,別紙対照表2のとおりの内容を含むものであると認められる。原告制作物2は,スペイン料理のシェフとコラボしたレシピブックであり,料理やシェフの写真,料理のレシピを選択,分類し,料理ごとに配列したものであり,編集物の素材である料理等の写真及びレシピの選択及び配列には,一応,編集者の個性が表れているものといえる。

もっとも,被告制作物2と原告制作物2を対比すると,別紙対照表2のとおり,選択された素材である人物,料理等の写真及びレシピ情報そのものが異なることはもちろん,それぞれの表紙及び裏表紙並びに1頁~2頁の構成や基調となる配色は異なる。また,それぞれの料理画像の背景が一部を除き白く,料理画像を配したことにより生じる空白部分にレシピ情報を配置していること,多くは1頁当たり1レシピ情報を掲載するものの,各5頁及び6頁は見開き2頁全面を用いて料理画像及びレシピ情報が配置されている点は,配置方針としては共通するものの,具体的な配置の在り方は,原告制作物2と被告制作物2とで異なる。レシピ情報のうち,料理の名称を材料及び料理方法に関する情報より大きめのフォントで記載するといったレシピ情報の構成についても同様である。しかも,料理の名称部分の配色については,原告制作物2においては料理ごとに異ならないと見られるのに対し,被告制作物2においては,料理ごとに異なる配色がされている。加えて,原告制作物2にはシェフの手書きを思わせるイラストによる料理イメージも各料理に併せて配置されているのに対し,被告制作物2には,そのようなイラストは存在しない。

これらの事情に鑑みると,被告制作物2は,【素材の選択や配列に係る具体的な表現において相違しており,】原告制作物2の編集著作物としての創作性を再現したものとは見られない。

(3) したがって,被告制作物2は,その余の点を検討するまでもなく,原告制作物2に係る著作権(複製権)を侵害するものとはいえない。この点に関する原告の主張は採用できない。

よって,原告制作物2に係る請求については,いずれも理由がない。

[控訴審同旨]

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/