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口述権侵害を否認した事例

 

▶平成25年12月13日東京地方裁判所[平成24(ワ)24933等]

(1) 証拠によれば,上記争点に関し,次の事実が認められる。

ア 前記前提事実のとおり,Eは,平成22年2月,一般社団法人カウンセラー検定協会(平成23年12月に「一般社団法人心検」に名称変更)を設立し,一般に受講生を募って心理学等を内容とする講座を開講するなどしていた。

イ Eは,平成22年頃から平成23年12月頃までにかけて,心検の上記講座等受講者のうち,原告信者である者から受けた質問や相談が心理学の範ちゅうを超えると感じた際などに,心検の「課外授業」として被告Bのカウンセリングを受けるよう勧め,上記勧めを受けた者が被告Bの自宅を訪れることがあった。また,Eは,心検の受講者以外の者にも,被告Bを紹介したことがあった。

ウ 被告Bは,上記のとおり自宅を訪れた者に対し,1時間から2時間程度話を聞くなどした上で,初回の訪問については3万円,二回目以降の訪問については1万円の金員を受領していた。なお,被告Bは,上記金員のうち,初回分の20%(6000円)をEに紹介料として支払っていた。

エ 被告Bは,上記のとおり同被告の自宅を訪れた者の相談を聞く中で,被告Cの同席の下,本件経文①ないし③を読み上げることがあった。

オ 被告Bは,上記エのほかにも,本件経文①ないし③を一人で又は被告Cとともに読み上げることがあった。

(2) 以上の事実を前提に,被告Bによる本件経文①ないし③の著作権(口述権)侵害の成否について検討する。

ア 著作者は,その言語の著作物を公に口述する権利を専有するところ(著作権法24条),「公に」とは,その著作物を,公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とすることをいい(同法22条),「公衆」には,不特定の者のほか,特定かつ多数の者が含まれる(同法2条5項)。そして,当該著作物の利用が公衆に対するものであるか否かは,事前の人的結合関係の強弱に加え,著作物の種類・性質や利用態様等も考慮し,社会通念に従って判断するのが相当である。

イ そこで本件についてみると,被告Bが,「心検」の受講者等のうち,Eの勧めを受けて被告Bのもとを訪れた者の一部に対し,本件経文①ないし③を読み上げたことがあり(以下,本件経文①ないし③の読上げを「祈願」ということがある。),また,本件経文①ないし③を一人で又は被告Cとともに読み上げたことがあることは前記(1)エ及びオでみたとおりであるところ,上記行為は,いずれも,言語の著作物である本件経文①ないし③を口頭で伝達するものとして,「口述」(著作権法2条1項18号)に該当する。

ウ しかし,上記イの口述のうち,後者(被告Bのみ又は被告Cと2人による読上げ)については,自宅内において,被告Bのみで又はその妻である被告Cと二人で行われたものであるから,上記口述が,公衆に直接聞かせることを目的として行われたものとは認められない。

したがって,上記読上げが「公に」なされたものと認められない以上,上記読上げが,本件経文①ないし③に係る原告の口述権を侵害するものとは認められない。

エ 次に,上記イの口述のうち,前者(被告Bが,同被告のもとを訪れた者に対し,本件経文①ないし③を読み上げたこと)が,本件経文①ないし③を「公に」口述したものとして,口述権侵害を構成するか否かについて検討する。

(ア) 被告Bは,上記(1)エのとおり祈願を行った人数について,Eから紹介を受けた5名のみであると述べている。他方,Eは,被告Bのもとを訪れて相談を受けるよう勧め,相談者からEが相談料金を受け取り,そこから紹介料を差し引いて被告Bに渡した人数につき,「心検」受講者について5名であり,それ以外に相談者が被告Bに直接相談料を支払った者が1名であるかのようにも受け取れる証言をしている。しかし,いずれにせよ,祈願を受けた人数は5,6名にとどまる。

原告は,この点について,被告Bが,多数の者を対象として本件経文の読み上げを行ったと主張し,原告信者らの陳述書を提出する。しかし,上記陳述書の作成者のうち,自らが被告Bの祈願を受けたとする者は降霊会等への参加者を含めて4名である。

以上によれば,被告Bが祈願を行った人数は5,6名にとどまるとみるべきであって,被告Bが多数人に対して祈願を行い,本件経文①ないし③を読み上げたものと認めることはできない。

(略)

(3) 以上によれば,被告Bにつき,本件経文①ないし③の口述権侵害は成立しないから,被告Bに対する本件経文①ないし③の口述の差止請求及び専ら口述権侵害行為に供された器具としての本件経文①ないし③の複製物の廃棄請求はいずれも認められない。

 

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