PV数と「受信複製物の数量」(法114条1項)は一致するか | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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PV数と「受信複製物の数量」(法114条1項)は一致するか

 

▶令和2年10月6日知的財産高等裁判所[令和2(ネ)10018]

一審原告の主張は,原判決が法114条1項ただし書に基づき,本件各漫画のPV数[注:PV(ページビュー)とは,ウェブサイト内の特定のページが開かれた回数を表し,ブラウザにHTML文書(ウェブページ)が1ページ表示されることにより1PVとカウントされる。]に本件各同人誌の利益額を乗じた額から9割を控除したことについて,原判決の認定判断の不当を種々の観点からいうものである。

しかしながら,一審原告の主張は採用することができない。その理由は,次のとおりである。

公衆送信行為による著作権侵害の事案において,法114条1項本文に基づく損害額の推定は,「受信複製物」の数量に,単位数量当たりの利益の額を乗じて行うものとされている。そして,本件のように,著作権侵害行為を組成する公衆送信がインターネット経由でなされた事案の場合,「受信複製物の数量」とは,公衆送信が公衆によって受信されることにより作成された複製物の数量を意味するのであるから(法114条1項本文),単に公衆送信された電磁データを受信者が閲覧した数量ではなく,ダウンロードして作成された複製物の数量を意味するものと解される。ところが,本件においては,公衆が閲覧した数量であるPV数しか認定することができないのであるから,法114条1項本文にいう「受信複製物の数量」は,上記PV数よりも一定程度少ないと考えなければならない。

(略)

そうすると,本件各漫画をダウンロードして作成された複製物の数(法114条1項の計算の前提となる数量)は,PV数よりも相当程度少ないものと予想される上に,ダウンロードして作成された複製物の数の中にも,一審原告が販売することができなかったと認められる数量(法114条1項ただし書に相当する数量)が相当程度含まれることになるのであるから,これらの事情を総合考慮した上,法114条1項の適用対象となる複製物の数量は,PV数の1割にとどまるとした原判決の判断は相当である。

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