婚礼ビデオの「映画製作者」が問題となった事例

 

▶平成31年3月25日大阪地方裁判所[平成30(ワ)2082]▶令和元年11月7日大阪高等裁判所[令和1(ネ)1187]

著作権法29条1項にいう「映画製作者」とは,「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」をいい(同法2条1項10号),映画の著作物を製作する意思を有し,同著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって,同著作物の製作に関する経済的な収入・支出の主体となる者のことをいうと解される。

前記で認定した事実のとおり,本件では,被告Bは,社内の人間だけでは撮影業務をこなせないことから複数の外部業者に撮影業務を委託するようになり,原告はその外部業者の一人であったことからすると,被告Bは,各婚礼のビデオ撮影業務の担当を各外部業者に割り振って委託することにより,全体としての婚礼ビデオの製作業務を統括して行っていたといえる。

また,Fホテルズから委託を受けて,新郎新婦から婚礼ビデオ製作の申込みを受け,その意向を聴取して打合せをするのは被告Bであり,婚礼ビデオを完成させて納品するのも被告Bである。また,被告Bは,原告による撮影に不備があった場合の新郎新婦に対する責任も負担している。そうすると,婚礼ビデオを適切に製作し,納品する【法律上の】義務は,Fホテルズからの委託の下,被告Bが負っていたといえる。

加えて,現場での撮影業務自体は基本的には原告の裁量と工夫に委ねられていたが,被告Bも,新郎新婦に特段の意向がある場合には原告にそれを伝えて撮影の指示を行っており,原告の裁量等も被告Bからの指示という制約を受けるものであったほか,被告Bは,婚礼ビデオを完成させるに当たり編集作業を行い,その中では,被告Bが独自に製作した「プロフィールビデオ」等の上映シーンを加工し,そのBGMを音源から採取して差し込むなど,独自の演出的な【編集を行う場合もあったのであるから】,製作するビデオの内容を最終的に決定していたのは被告Bであるといえる。

そして,被告Bは,原告に対して撮影料と交通費を支払っているほか,それ以外の製作費用も負担しているから,本件記録ビデオの製作に関する経済的な収入・支出の主体となっているのは原告ではなく被告Bである。なお,被告Bは,本件記録ビデオに収録された楽曲についての著作権使用料等の【支払をしておらず,むしろ控訴人が合計96万9092円を支払っているが】,原告は,本件記録ビデオに収録された楽曲の著作権使用料は被告Bが負担することとなっていたと主張しており,この主張は,上記のとおり本件記録ビデオの製作に関する経済的な収入・支出の主体が被告Bであることと符合する。

以上からすると,本件記録ビデオの製作に発意と責任を有する者は,被告Bであり,被告Bは「映画製作者」に当たると認めるのが相当である。

そして,原告は,被告Bから委託を受けて原告撮影ビデオの撮影をしたのであるから,被告Bに対して本件記録ビデオの製作に参加することを約束したものといえる。

したがって,著作権法29条1項により,本件記録ビデオの著作権は被告Bに帰属するから,原告は著作権を有しない。

 

[控訴審同旨]

当裁判所も,本件記録ビデオは,映画の著作物であるところ,その製作に発意と責任を有する者は被控訴人であって,被控訴人が「映画製作者」に当たるところ,控訴人は被控訴人に対して本件記録ビデオの製作に参加することを約束したということができるので,著作権法29条1項により本件記録ビデオの著作権は被控訴人に帰属し,控訴人は著作権を有しないと判断する。

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