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「引用」(法32条)における主従関係

 

▶令和4年12月19日東京地方裁判所[令和4(ワ)5740]▶令和5年5月25日知的財産高等裁判所[令和5(ネ)10006]

原告らは、本件著作物の引用が主従関係を満たしていないことからすれば、公正な慣行に合致していないし、正当な範囲内にも該当しない旨主張する。しかしながら、本件著作物は、合計4頁の本件出版物のうち半頁を占めるにとどまることからすると、「生命の實相」をたたえる上での本件著作物の重要性に鑑みても、主従関係を満たさない旨の原告らの主張は、その前提を欠く。しかも、原告ら主張にいう主従関係は、旧著作権法(明治32年法律第39号)30条1項2号にいう引用の意義を示した最高裁昭和51年(オ)第923号同55年3月28日第三小法廷判決の判例法理をいうものである。そのため、原告ら主張に係る事情は、現行の著作権法32条の要件該当性の判断において、正当な範囲内か否かを判断するための一事情としては考慮され得るものの、当該一事をもって判断することは、必ずしも適切ではない。

したがって、原告らの主張は、採用することができない。

 

[控訴審同旨]

控訴人らは、前記のとおり、著作権法32条にいう引用に該当するためには、両著作物の間に引用して利用する側の著作物が主、引用されて利用される側の著作物が従の関係があると認められる場合でなければならない旨主張するが、仮に、引用に該当するために控訴人らの主張する要件が必要であるとしても、本件出版物においてこれが満たされているというべきことは、引用に係る原判決の説示のとおりであり、本件出版物の体裁、構成、内容等のいずれの点から見ても、本件著作物が従として位置付けられることは自明である。

控訴人らは、本件著作物と本件出版物とでは著作物として思想や感情の創造的表現物としてレベルが違いすぎ、分量を重視する原判決の判断は不当である旨の主張もするが、著作物の内容の価値や評価に立ち入り、その軽重を前提にして主従関係を判断することが相当とはいえないから、そもそも控訴人らの主張はその前提を欠くものというべきであるし、また、分量が一つの重要な客観的指標となることは明らかであるところ、本件著作物と本件出版物の間において、合計4頁の本件出版物のうち半頁を占めるにとどまる本件著作物が主となると評価するだけの事情は認められない。したがって、控訴人らの主張は、いずれにしても採用できない。

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