『アメリカ連邦著作権法における”著作物”とは~著作物の概念~2/4』

 

①「表現」性について

 

「表現」性の要件に関連して、次の規定があります(米国著作権法102条(b)):

 

『いかなる場合にも、著作者の作成に係る著作物に対する著作権による保護は、アイディア[着想]、手順、工程[プロセス]、方式[システム]、操作方法、概念、原理又は発見には及ばない。このことは、これらが当該著作物において記述され、説明され、図解され、又は収録される形式の如何にかかわらない。』

 

(参考:原文)

In no case does copyright protection for an original work of authorship extend to any idea, procedure, process, system, method of operation, concept, principle, or discovery, regardless of the form in which it is described, explained, illustrated, or embodied in such work.

 

すなわち、著作権は、外部に発現した「表現」を保護するものであって、その表現の背後や根底にあるような「アイディア」を保護するものではない、ということを明らかにしています。このように、著作権による保護を画する場合に、「表現」と「アイディア」を厳格に二分して捉える考え方を「アイディア-表現二分法」”idea-expression dichotomy”といい、アメリカでは、古くから現在においても、判例においてしばしば引用されている非常に重要なアプローチ手法です。

 

「アイディア-表現二分法」のリーディングケースと呼ばれている事案が「Baker v. Selden, 101 U.S. 99 (1879)事件」です(以下、Bakerケースといいます)。Bakerケースでは、「独自の簿記システム」に、そのシステムを説明した「書籍」の著作権が及ぶかが最大の争点となりました。連邦最高裁は、簿記に関する書籍の著作権は、その中で解説されているシステム(アイディア)に基づいて(そのアイディを使って)、会計帳簿を作成したり、販売したりすることをその書籍の著作権者に保証するものではない、特許による保護を取得するのであれば格別、そうでなければ、だれでも、当該書籍の中で説明されている簿記の技術(=システム・アイディア)それ自体を実践し、利用することができる、と判示しました。

 

著作権法は、「表現保護法」であって、アイディアやシステムを保護するものではない、とする考え方は、アメリカや日本においてのみならず、国際的な了解事項になっています(注)。

(注) この点につき、WIPO著作権条約2条及びTRIPS協定9条2項には、次のような規定があります:『著作権による保護は、表現されたものに及び、アイディア[思想]、手順[手続]、運用[操作]方法又は数学的概念それ自体には及ばない。』

(原文) Copyright protection extends to expressions and not to ideas, procedures, methods of operation or mathematical concepts as such.

http://www.kls-law.org/