転職情報の著作物性が争点となった事例
▶平成15年10月22日東京地方裁判所[平成15(ワ)3188]
原告転職情報の著作物性について
(1) 著作権法による保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることが必要である(法2条1項1号)。
「思想又は感情を表現した」とは,単なる事実をそのまま記述したようなものはこれに当たらないが,事実を基礎とした場合であっても,筆者の事実に対する何らかの評価,意見等を表現しているものであれば足りるというべきである。また,「創作的に表現したもの」というためには,筆者の何らかの個性が発揮されていれば足りるのであって,厳密な意味で,独創性が発揮されたものであることまでは必要ない。他方,言語からなる作品において,ごく短いものであったり,表現形式に制約があるため,他の表現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が現れていないものとして,創作的な表現であると解することはできない。
(2) 上記の観点から,原告転職情報の著作物性について判断する。
証拠によれば,以下の事実が認められる。すなわち,原告が掲載した転職情報は,S社の転職情報広告を作成するに当たり,同社の特徴として,受注業務の内容,エンジニアが設立したという由来などを,募集要項として,職種,仕事内容,仕事のやり甲斐,仕事の厳しさ,必要な資格,雇用形態などを,それぞれ摘示し,また,具体的な例をあげたり,文体を変えたり,「あくまでエンジニア第一主義」,「入社2年目のエンジニアより」などの特徴的な表題を示したりして,読者の興味を惹くような表現上の工夫が凝らされていることが認められる。
確かに,別紙比較対照表1における原告転職情報3,6だけを見ると,単に事実を説明,紹介するだけであり,文章も比較的短く,他の表現上の選択の幅は,比較的少ないということができる。
しかし,前示のとおり,別紙比較対照表1(対照表2も同じである)における原告転職情報の各部分はいずれも読者の興味を惹くような疑問文を用いたり,文章末尾に余韻を残して文章を終了するなど表現方法にも創意工夫が凝らされているといえるので,著者の個性が発揮されたものとして,著作物性を肯定すべきである。