『映像コンテンツの取扱いには特に注意を!3/5』

 

§ 映像コンテンツにのみ適用される「特別な規定」その

 

では、さっそく見ていきましょう。著作権法の中に規定されている、映画(の著作物)にだけ適用される「特別な規定」はいくつかあるのですが、映像コンテンツに関わるビジネスを展開するうえで重要となる権利処理という観点からとりわけ重要なのが、「映画の著作物の著作者」に関する規定と、「映画の著作物の著作権の帰属」に関する規定です。この他にも、「頒布権」に関する規定(26条)や「映画の著作物の保護期間」に関する規定(54条)も重要なのですが、これらについてはまた別の機会に解説したいと思います。

 

「映画の著作物の著作者」に関する規定(16条)の解説

 

映画の著作物の著作者は、職務著作(15条)の適用がある場合を除き、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」とされています。具体的に誰がこれに当たるかは個々の映像コンテンツについて個別具体的に判断されることになりまするが、通常は、プロデューサー、監督、撮影監督、美術監督、特殊撮影の監督などで、その映画に対して一貫したイメージを抱きそれを実現した者が当該映像コンテンツの著作者として扱われます。ただ、映像コンテンツの製作(制作)には、その性格上、非常に多くの人が関与しているため、当該映像コンテンツの「全体的形成に創作的に寄与した者」が複数人いる場合も考えられ、その場合、「各人の寄与を分離して個別的に利用することができない」という事情があれば、当該映像コンテンツは、著作権法上、「共同著作物」(2条1項12号)と評価され、共同著作物に特有の規定(例えば、64条や65条)の適用を受けることになります。

 

映像コンテンツの原作となった小説や漫画、脚本、その映像コンテンツの中で利用(複製)されているBGMや美術作品などの著作物の著作者は、当該映像コンテンツの著作者とは扱われません。しかし、彼らには、当該映像コンテンツに利用(翻案・複製)された著作物の著作者として、当該映像コンテンツの利用に関し、一定の権利が付与されるため、当該映像コンテンツの展開(二次利用)においては、彼らとの権利処理も念頭に入れておかなければなりません。

一方、例えば、ドキュメンタリー映画を製作する映像会社が自社の従業員に映画を製作させた場合、「その映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」が当該従業員であっても、当該映画の製作が「職務著作」の要件(15条1項)を満たすものであれば、その映画の著作者は、当該映像会社となります。この点も注意が必要です。

さらに、映像コンテンツに出演している俳優や声優、演奏家等については、著作権法上、「実演家」として「著作隣接権」及び「実演家人格権」による保護を受けます。そのため、彼らとの権利処理もクリアにしておかなければなりません。

 

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