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布団の絵柄(テキスタイルデザイン)は著作物に当たるか

 

▶令和5年4月27日大阪高等裁判所[令和4(ネ)745]

以上の観点から、本件絵柄についてみると、本件絵柄それ自体は、テキスタイルデザイナーであるP1によってパソコン上で制作された絵柄データであり、また、実用品である布団の生地など、量産衣料品の生地にプリントされて用いられることを目的として制作された絵柄であるが、その絵柄自体は二次的平面物であり、生地にプリントされた状態になったとしても、プリントされた物品である生地から分離して観念することも容易である。そして、本件絵柄の細部の表現を区々に見ていくと、控訴人が縷々主張するようにテキスタイルデザイナーであるP1が細部に及んで美的表現を追求して技術、技能を盛り込んだ美的創作物であるということができ、その限りで作者であるP1の個性が表れていることも否定できない。

しかし、本件絵柄は、その上辺と下辺、左辺と右辺が、これを並べた場合に模様が連続するように構成要素が配置され描かれており、これは、本件絵柄を基本単位として、上下左右に繰り返し展開して衣料製品(工業製品)に用いる大きな絵柄模様とするための工夫であると認められる(本件絵柄は、原告商品であるシングルサイズの敷布団では上下左右に連続して約6枚分、掛布団では同様に約9枚分プリントされて全体に一体となった大きな絵柄模様を作り出すよう用いられているから、この点において、その創作的表現が、実用目的によって制約されているといわなければならない。

また、本件絵柄に描かれている構成は、平面上に一方向に連続している花の絵柄とアラベスク模様を交互につなぎ、背景にダマスク模様を淡く描いたものであるが(本件絵柄に用いられている模様が、このように称される絵柄であることは訴訟当初から当事者間に争いがない 。)、証拠及び弁論の全趣旨によれば、アラベスク模様はイスラムに由来する幾何学的な連続模様であり、またダマスク模様は中東のダマスク織に使用される植物等の有機的モチーフの連続模様であって、いずれも衣料製品等の絵柄として古来から親しまれている典型的な絵柄であり、これら典型的な絵柄を平面上に一方向に連続している花の絵柄と組み合わせ、布団生地や布団カバーを含む、カーテン、絨毯等の工業製品としての衣料製品の絵柄模様として用いるという構成は、日本国内のみならず海外の同様の衣料製品についても周知慣用されていることが認められる。そして、本件絵柄における創作的表現は、このような衣料製品(工業製品)に付すための一般的な絵柄模様の方式に従ったものであって、その域を超えるものではないということができ、また、販売用に本件絵柄を制作したP1においても、そのことを意図して、創作に当たって上記構成を採用したものと考えられるから、この点においても、その創作的表現は、実用目的によって制約されていることが、むしろ明らかであるといえる。

そうすると、本件絵柄における創作的表現は、その細部を区々に見る限りにおいて、美的表現を追求した作者の個性が表れていることを否定できないが、全体的に見れば、衣料製品(工業製品)の絵柄に用いるという実用目的によって制約されていることがむしろ明らかであるといえるから、実用品である衣料製品としての産業上の利用を離れて、独立に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えているとはいえない。

 

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