著作権売買の落とし穴~「二重譲渡」という魔物(リスク)に対処する~1/6

 

§ はじめに

 

およそビジネスの基本は、「売買」です。「売買」の対象となるものは実にさまざまですが、「著作権」という「無体財産権」も、「特許権」と同様に、「売買」の対象となります。つまり、「著作権」は、それを「売ったり」・「買ったり」できるということです。自動車や土地建物のように、「担保」として「著作権」を差し出し、(譲渡担保という形で)金融の得ることも可能です。

しかしながら、一方で、多様な著作物を客体とする「著作権」は、「著作者人格権」との関係を含めて、権利自体が非常に複雑でかつ抽象的であるため、その取引(売買)も、当然のことながら、外からはその「実態(実体)」(権利関係の実際)を把握することが非常に難しいという「宿命」を背負っています。自動車や土地建物といった有体物に対する所有権の売買にはない「難しさ」や「不安定さ」といったマイナス要因が、著作権取引(ビジネス)には本来的に付きまとっているといえるでしょう。この点は、特許権や商標権、営業秘密(トレードシークレット)、ノウハウなどの売買と共通しています。

かつて、すでに他人に譲渡してある音楽著作権を担保に投資家から数億円を引き出した著名な音楽プロデューサーの事件がありました。この世間を騒がせた詐欺事件(この事件に関しては、当時、私もいくつのマスコミにコメントを寄せました。)は、以上のような著作権売買の「難しさ」や「不安定さ」を意図的に利用して、さらに、「二重譲渡」の盲点を巧みに突いたものと評価することもできます。この著名な音楽プロデューサーの事件は、まさに「著作権売買の落とし穴」の例ですが、このような「派手」なケースでなくても、「著作権売買の落とし穴」は、日常的なコンテンツビジネスの中に常に潜在しています。ここでは、「著作権売買の落とし穴」の顕著な例である著作権の「二重譲渡」という魔物(リスク)について、ケーススタディを通して、その「怖さ」の原因と、それを取り除くための「対処法」を探ってみたいと思います。

この記事は、少々長く、内容も専門的で、難しく感じるかもしれません。なるべく分かり易く解説していきますので、どうかあきらめずに、最後までお付き合いください。

 

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