『AIによって生成される作品は著作権によって保護されるか3/3』
(注)本件記事は、2023年4月27日現在の情報をもとに作成しています。
生成AIが単に人間からの指示(プロンプト)を受け取り(注2)、それに応えて複雑な作品(文学作品や美術作品、音楽作品など)を生成しても、現在のところ、生成AIのユーザーである人間は、AIが指示(プロンプト)をどのように解釈し、素材を生成するのかに対して「最終的な創作的制御」(ultimate creative control)ができません。生成AIに対する指示(プロンプト)は最終生成物に対して影響力は持ちますが、それを明確に規定し制御するものではないのです。そこで行われる指示(プロンプト)は、いわば、美術作品の制作を依頼されたアーティストに対する、注文主(依頼者)の指示と同じようなものなのです(ここで「注文主(依頼者)」は決して「著作者」にはなりえません。)。
(注2)「プロンプト」の中には、それ自体で著作権によって保護させるのを十分な創作性を持つテキスト(文書)がありえますが、だからと言って、そのことは、そのようなプロンプトに応じてAIが生成した素材(最終生成物)もまたそれ自体で著作権によって保護される、という話にはなりません。
もっとも、生成AIを使って生み出された素材を含む作品はすべて一律に登録が排除されるということではない点に留意する必要があります。つまり、生成AIが最終的な作品を生み出すためにどのように使われたかによって、当該作品に著作物性が認められるか否かの結論は変わってくるのです。まさに、ケースバイケースです。生成AIによって生み出された素材を含む作品であっても、最終的に出来上がった作品が全体として人間の著作に係る創作的な表現と認定されれば、そのような作品は(AIによる生成物を含んでいたとしても)全体として保護されることになりのです。「編集著作物」(compilation)を念頭に置けば、編集物全体の中にAIによって生成された素材が選択配置されていると考えれば、そのような編集物の著作権による保護も可能になります。もちろん、この場合、AIによって生成された素材それ自体に個別の著作権が生じることはありません。さらに、「派生的著作物」(derivative work)を念頭に置けば、ある者がAIによって生成された素材に創作的な変更を加えれば、そのように変更された作品の派生的著作物としての保護が可能になります(注3)。
(注3)生成AIによって生み出される素材(コンテンツ)の取扱いに関して、著作権局の目下の大枠の運用方針は、「AIが生成する、”些細なもの”(「最低限度の創作性」という程度の意味です。)とは言えない、それ(些事)以上のコンテンツは、明白なかたちで、申請から除外されるべきだ」(AI-generated content that is more than de minimis should be explicitly excluded from the application.)という点に集約できると思います。つまり、著作権局の実務上の運用としては、人間の創作に係る部分と専らAIが生成した部分を明確に区別して申請することを求めています。
ここで誤解のないように述べておくと、生成AIによって生み出される素材の著作物性の問題は、人間が自己の創作的な作品を生み出す際に技術的な道具(ツール)を使うことできるかということとは関係がないという点です。人間がある作品(創作性のある著作物)を生み出す過程で、人間は、AIを含めて技術的な道具(ツール)を使ってよいのです。「カメラ」という機械に依存する点が大きい「写真」は伝統的に「著作物」ですし、画像や音声の編集ソフトを使って創作される作品も、通常は(人間の介在の程度にもよりますが)「著作物」として扱われるはずです。
問題の核心は、人間がAIを含めて技術的な道具(ツール)を使って生み出した素材やコンテンツを、どのような場合に「人間が創作的に表現したもの」として保護するべきか、という点なのです。ここからは私見ですが、AIがそこでアウトプットされる最終生成物の「創作的な素材(要素)」(ここで、「創作的な素材(要素)」とは、人間が作成したならば、「著作物」の範疇に入る程度の創作性のある表現物を意味します。)を決定(制御)している場合には、そのような素材(要素)は人間の創作にかかるものではありません。したがって、そのような素材(要素)を著作権によって保護することはできないでしょう。一方、AIによってアウトプットされる最終生成物に人間が創作的に関与(介在)した、又は、その最終生成物の生成過程の全体を人間が創作的に制御(コントロール)できたというような事情があれば、そのような最終生成物は「人間の創作にかかる」ものとして著作権によって保護されてよいと思います。
AI技術を取り巻く著作権法上の議論ははじまったばかりです。AI技術は今後さらに進歩していくでしょう。それに伴ってあらたな法律上の問題、著作権法上の問題が提起されるでしょう。難しい問題になることが予想されますが、著作権ビジネスを支援する者として、今後の推移を見守っていきたいと思います。AI技術と著作権の問題に関しては、行政当局の運用や裁判所の判断に注目すべきものが出てきた段階で、追加の記事を掲載するつもりです。
以上