『AIによって生成される作品は著作権によって保護されるか1/3』
(注)本件記事は、2023年4月27日現在の情報をもとに作成しています。
”AI”とは、”Artificial Intelligence”の略語で、「人工知能」を意味します。この言葉自体は以前からありましたが、技術進歩によりコンピューター自体の性能が大きく向上したことから、機械であるコンピューターが「学ぶ」ことができるようになりました。現在、いわゆる深層学習(ディープラーニング)による人工知能の開発が進んでおり、そのような機械学習がAIの中心的技術になっていると言えます。AI技術は、現在、自動運転や医療、犯罪捜査などの分野で大きな役割を果たしつつあります。
「生成AI」ということばがあります。英語では、”generative AI”と表記します。これは、画像、文章、音声、プログラムコードなどのさまざまなコンテンツを生成することのできる人工知能のことです。大量のデータを学習したAIが、人間が作成するような絵や文章を生成するのです。今や、AI技術は、論文や報道記事、小説、音楽、絵画、画像、コンピュータープログラムといった「著作物」の創作に使われはじめています。しかし、同時に、このことが著作権法上の難題を提起しています。その一つが、この記事のタイトルになっている「AIによって生成される作品は著作権によって保護されるか」という問題です。
創作分野における生成AIの活用ははじまったばかりですが(注1)、今後、これを巡る法律上の(特に著作権法上の)紛争が、日本のみならず、世界各国で頻発することが予想されます。
ここでは、表題の問題について最も先を行っていると思われるアメリカでの動きを、私見を交えながら紹介していきます。
(注1)人工知能学会は2023年4月25日、文書や画像などを作る「生成AI」について、「有用性の高いAIだが、まだ発展途上の技術」だとして、その安易な利用に警鐘を鳴らす声明を発表しました。
アメリカ合衆国(以下、「アメリカ」といいます。)には、著作権主張の登録管理を公的に行う「アメリカ連邦著作権局」(以下、「著作権局」といいます。)という専門の連邦行政機関があります。この機関は、著作権に関わる各種の登録を年間約50万件処理しており、また、連邦議会などに、著作権に関するさまざまな問題についての専門的な助言や見解を提供する機関でもあります。そのため、著作権に関わる個別具体的な紛争を扱う連邦裁判所においても、そこでの法解釈において、一般的に、著作権局が示す専門的な見解は尊重されます。このような著作権局が、AI技術を使って生み出される素材を含む作品の著作物性(copyrightability)及びその登録可能性を明確にするための方針(指針)を打ち出しました。それが、2023年3月16日に公表された、”Copyright Registration Guidance: Works Containing Material Generated by Artificial Intelligence”(「著作権登録の指針:AIによって生成される素材を含む作品」)というタイトルの方針(指針)です。著作権局では、すでに、AIによって生成された素材を含む作品の登録(著作権登録)申請がいくつか行われていた経緯があり、それに対応する形で方針(指針)が示されたわけです。
学習AIの技術は、膨大な数のデータ(その中には人間によって創作された既存の著作物も数多く含まれているはずです。)をもとにAIに学習(訓練)させます。そして、生成AIは、「プロンプト(prompt)」と呼ばれる、ユーザーの文書による指示に応じてAIがアウトプットを行います。そのようにして生成されるアウトプットには、文書や画像、音声などがあります。上述したように、生成AIによって生み出される素材ないし作品は、そもそも著作権によって保護されるのか、人間の創作に係る部分と生成AIによって生み出される素材の両者で構成される作品はどうなるのか、などの問題がすでに提起され、実務上も問題になっているのです。
例えば、2018年に著作権局に申請されたある「視覚的な作品」(a visual work)において、申請者は、申請書の中で、登録を求める作品について「機械で作動するコンピューターアルゴリズムによって自主的に創作された」(‘‘autonomously created by a computer algorithm running on a machine’’)ものだと述べました。この登録申請は、申請者の上述した表明が原因で、最終的に拒絶されました。その理由は、「当該作品にはなんら人間の創作性が含まれていない」(the work contained no human authorship.)、「それは、人間による創作的な貢献がいっさいなく作成された」(it was made without any creative contribution from a human actor.)からというものでした。
最近の例では、2023年2月、著作権局は、ある「グラフィックノベル」(人の創作にかかる文書にAIによって生成された画像が組み合わされたもの。申請者は、「コミックブック」として申請した。)について、それが「著作物性のある作品」(a copyrightable work)に該当すると結論付けました。もっとも、当該作品中の「個々の画像それ自体」(これはAIによって生成されたもの)については、著作権によって保護することはできないとしました。