【ネタバレ注意】風立ちぬ、か、彼の夢か | 青い病気の記録@アメブロ出張所

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※今日の日記は7月20日公開の「風立ちぬ」に関してネタバレを含めた記述があります。
念のため公開当日まで反転処理を行いますが、ネタバレに触れたくないかた、真っさらな気持ちで当作品を鑑賞したい方は、この先見ないようよろしくお願いします。

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20130717
曇りがちのジメジメな一日。
雨はもっと降ってもいいのよ。

というわけで、風立ちぬの試写会。

いろんな人の評価を見て感じたのは、
「この映画、もしかして見てるひとの社会性を計るリトマス紙じゃないのか」
という疑問。

社会や他者と向き合ってきた人間には感動できる要素や理解できるポイントがあって楽しめるが、向き合わずに自分の殻に篭って生きてきた人間には単なるオナニーにしか見えなくて全く面白さを見つけられない、本当はオタク禁制のヤバイ映画なのではないかと。
ここでいうオタクというのは、特定のマニアであると同時に自らの世界に他者の存在を許さない、常に虚構によって自らを慰み続ける情けない者、でもある。
そんなメンタリティの人間に、社会や他者と真面目に取り組んでいるこの話を理解する力はない。

まるで、離乳食のような物語しか理解できないオタクはこの場から去れ、といわんがばかりだ。

ある意味旧劇エヴァ時代の庵野秀明がやりたかった夢を、72歳にしてやすやすと作ってしまう宮崎駿の恐ろしさを感じてしまいそうだ。


…と、思うと一緒に見に行くまだ大学生のサキエルがついていけるのか、不安を覚える。
リアルタイムで解説ができない映画館で耐えられるのか、正直怖い。
でも、エヴァQを楽しめた奴だし、奴の目を信頼するか、とあらすじを教えるのを辞めた。

これが、試写会前日の朝の気分。
仕事明けのハイテンションもあるが、富野さんの評価を聞いてなにかを掴んだ気はした。
あとは自分の人生で培われてきた客観視のマトモさを信じる。
多分自分的にはオッケーだろう、と。

で、試写会。
一言でいうと、普通に面白かった。そして、純粋に美しい話。
色々見る前に悩んでいたこともあって複雑な気持ちで映画館に入ったけど、いざ始まったら、すいっと話に入り込めた。ポニョのときの入りが辛かったのとは対照的。

てか、いま批判してるやつマトモに観てないでモノいってるだろ。


以下、ネタバレモード。

コンセプトは「頑張れ日本の技術者と彼を愛する伴侶よ」だと思う。一番頑張っている日本人たちへの応援詩。
話はいつもの宮崎メソッドだけど、今回は妄想ノートモードのミリオタ側面も合流。

意外と見る前の感覚は間違ってなかったけど、いうほど大人の映画ではないような。誰だよ、R18とかいった奴。
まあ胡蝶の夢成分多めで、老人映画なのは間違いないのですが、ポニョみたいな認知症なヤバさはない。
あと、子供にも鑑賞に耐えるだけの説明や飴は与えてあると思う。多分「火垂るの墓」レベル、ふた昔(~1970年代)前くらいの歯応えの固さの物語構造。

…いやまて、むしろ最近の安いメロドラマしか受け入れない層のために優し目に配慮してるというか…いや単なる駿爺さんのフェミニストな助平感情かも。
その女に媚びてる感が鼻につく男性もいるみたいだけど、そういう意見持つ男性の身勝手さに世界が苛立ち疲れ果ててるからだよ、という宮崎駿の悪意というか批判のような気がする。
現に、片言で危険な単語のあとに「忘れる」を繰り返していた反ナチスのカストルプは、特高即ち秘密警察に追われ二郎にとばっちりを与えながら退場してしまった。
モデグラ原作は単なるクレソン大好きな愛すべき豚だったのになんでこんな設定が入り込んだのか。

カプローニのいう「君には風は吹いているかい?」は「お前しっかり生きているか?」な偉大なる成功者からの問いかけなのだ、と思う。

割と賛否両論になるのが、声優庵野秀明だと思うんですが、最初の関東大震災のあたりに違和感を感じた位で、「マイペースで有能な技師」のイメージにはハマッていたと思います。決して上手くはないが、下手というほどじゃない。
専門用語連発のときはエヴァやナディアのオペレータをやってるみたいで笑えたのはココだけの話。
この会話で本庄@西島秀俊よりも優秀であるのが解る。多分コレは狙ってた気がする。
笑ったのが試写会後、後ろにいた女性2人組が「二郎さんみたいなひとと結婚したいよねー」、これ割と本質かもしんないね。
いて欲しい時に寄り添ってくれる男に女は弱い。

あと個人的にモノラル音響にしたのは大正解派。飛行機音を人力にしたのは少々滑った感ありますが。
これステレオにしたら怖いだけのトラウマ映画に成りかねない。
今回のコンセプトはリアリティではなく伝記漫画的な「技術者への応援歌」だと思うので、シビアな衝撃音やエンジン音は恐怖にしかならない。もういっちょいうとミニマムな久石音楽もステレオだと不気味な怖さを感じそうだ(まあ北野武モノで無性に怖かったトラウマのせいなんすが)。
まあ、ミリオタには食い足りないだろうけど「んなもんジブリ以外に求めろよ」、と思うし。

唯一泣いたのが、高原病院から名古屋に向かう菜穂子のとこ。
このコートの色とデザインが、昭和10年生まれの母が愛用していたものと一致…
正に昭和一桁の夢の世界、そのものなんだと思うと切なくてね…
逆に結婚式の菜穂子は、個人的にはなんかサマウォのヒロインのOZZアバターみたいでダメだった…とほほ。

ちなみにサキエル曰く、
「言の葉の庭よりはずっと面白かった、綺麗なだけじゃダメだね」
とのこと。ホッ。
てかアレダメなの?

そういや、自分いわゆる宮崎アニメの婆さんが生理的に大嫌いで、そのためそんな醜くて訳知り顔の婆さんがのさばる「千と千尋の神隠し」と「ハウルの動く城」ごと大嫌いになった経緯があるんですが、今回一切この手の女がいませんね。
これも、美しい映画、と思う一因かもしんない。




しかし、疲れた。てか、痩せろ自分。

てなわけで、続く。


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