ばあちゃんが死んで、通夜の日の夜のこと。
母親と交代してばあちゃんの遺体の側でばあちゃんの遺品を整理してたら名前を呼ばれた気がした。
何となく遺体の方を振り向いたらばあちゃんの遺体の前に死んだはずのばあちゃんが正座してる。
えっ?と思ってみてたら俺が持ってたばあちゃんの鞄を指差してニコニコ笑った。
鞄を探ると、ばあちゃんの通帳ともう一冊、俺名義の通帳。
俺が顔を上げたらもうそこにばあちゃんはいなかった。
居間で夜食をとってた姉ちゃんにさっきのことを話して通帳を見せると、姉ちゃんがボロボロ泣き出して
「ばあちゃんね、アンタにバイクを買ってやりたいんだって年金の中から貯金してたんだよ」
その言葉に通帳を開けば残高8万。
バイク買うには全然足りない。
おまけに、俺は自分の貯金で新しいバイクを買ったばかりだった。
けど、俺のためにと年金を貯めてくれてるばあちゃんの姿が頭に浮かんできて、俺は子供みたいに泣いた。
昨日のことだ。

前のバイクで事故って鎖骨骨折した時には病院で大泣きされて「二度とバイクなんか乗らんでくれ」って言われたけど、それでもこりずにバイク乗ってたからまさかばあちゃんが…って思ったよ。
唯一の男孫だったからすげー可愛がってくれた。
心臓の病気で入院してからあんまり見舞い行けなかったのにばあちゃんは最後の最後まで優しいばあちゃんだった。
せめて俺が嫁さん貰うまでは生きてて欲しかった…。


ばあちゃん、ばあちゃんが残してくれた金は大切に使うな。
新しいメット買って晴れた日には自慢の愛車と一緒に会いに行くよ。
ばあちゃんが好きだったおはぎを持って、さ。