長期の休みを利用して実家に帰った時の話である。
自分と同じくゲームファンである妹がwiiを持ち帰っていたため
姉妹は久々にゲームを堪能した。なんと愉快な事か。
少し老けた父と母も、ゲームに興じる子供達を今更たしなめたりはしない。
それどころか、分別のついた年齢になっても仲良く遊ぶ二人を
微笑ましく眺めている。
キャアキャアと二人がリモコンを振っていると、やがて父親がトイレに立った
そして、二人のそばを通る時、なぜか大きな声でこう告げた
「お父さん、通りまーす!」
…なぜ、そんな事をわざわざ宣言するのか?姉妹は不思議に思ったものの
すぐに意識はテレビ画面へと戻った。
やがて休みが終わり、私も妹も実家をあとにした
そして、都会へと戻る電車の中で、私は突然に昔の場面を思い出したのだ。
あれは小学生の頃だ。居間のテレビにはファミコンが繋がっていて
私は妹と二人で毎日の様にコントローラーを握っていた。
父も母もまだ若く、ゲームという娯楽を完全に肯定しているわけでは無かったため
ゲームをするにあたってふたつの約束事を姉妹に守らせた
すなわち、ゲームは一日2時間まで。そして、テレビから3メートル以上離れる事
もちろん、姉妹は守った。ある日、二人は「ドラクエ」をプレイしていた。
経験値を稼ぐ為、2人で2時間近くバトルを繰り返していた。
もう少しでレベルアップだ、と姉妹が感じ始めたころ
父がテレビの前を通り過ぎようとした。そのときだ。
「ピ―!」奇妙な電子音とともに、画面がフリーズした。
フリーズしたのは画面だけではない。
姉も、妹も、そして父も、動きを止めた、父はファミコンとテレビを繋ぐ
コードに足を引っかけたのだ。幼い二人にとって、2時間の消失は
ある種の絶望を意味した。二人は、文字通りわんわんと泣いた。
そして、たんにテレビの前を通っただけの父にとってもその出来事は
トラウマとして刻まれた。長く時が流れ、幼い二人は絶望を忘れたが
父はゲームとセットで記憶し続けた。それで言ったのだ
「お父さん、通りまーす!」
全てのを帰路の車中で悟った時、成長した姉は遠ざかる実家の父に向かって
語りかける。お父さん、ごめんね。wiiのリモコンはワイヤレスだし、
私達も、もう泣いたりしないよ。