真っ暗な部屋の中、一つ……二つ……まるで怪談物のような抑揚のない声が響いていた。
声の主の名は佐藤絵里果。社会人2年目の24歳のOLだ。
彼女が手に持っていたのは銀行の預金通帳だ。
驚くべきことに一つとして同じ場所のものは無く、30種類の通帳があった。
「はあ~……。これからどうしよっかな。」
通帳を見て困り果てた彼女を見れば多くの人が借金操りに困っているのかと思うだろう。
しかし現実は逆だった。
預金通帳には預け入れている額が全て一千万円以上。五千万円以上預けているものもあった。
何故ただのOLにすぎない彼女がそのような大金を持っているのか。
宝くじに当たったためだ。
冗談言うなと思うかもしれないが、複数のものに同時に当たってしまい、総計5億となった。
今や彼女の全財産は五億百万円。百万円は2年間で彼女が貯めた額だった。
「2年間頑張って貯めた金額の500倍が一瞬で手に入っちゃうなんてなあ……。」
ほとほと困り果ててしまった。
大金が手に入って遊び呆けようとは考えない堅実な性格だった。
また宝くじに当たったことを自慢すれば犯罪に巻き込まれるかもしれない事も、それを防ぐためにも仕事をやめるわけにはいかない事も彼女は分かっていた。
しかし、どれだけ頑張っても年収は今の全財産の1%にも満たないだろう。
そうなってしまってはモチベーションは上がらない。
「仕方が無い……。ひとまず明日は普通に会社に行こう。それでから考えよう。」
通帳を引出しの中にまとめて片付け、床についた。
株式会社東現の朝はいつも静かだ。始業時間ぎりぎりに来るような人間はいないからだ。
いつもなら。
佐藤絵里果は前日、なかなか寝付けず寝坊して遅刻した。
「おいおい、ぎりぎりだな~。たるんでるんじゃないか~?」
同僚の冷やかす声に耳を傾けることもなく着替え、朝礼を聞き、仕事に取り掛かった。
二年目の彼女は多少は責任ある仕事を任されていた。
今日も彼女は一所懸命にその仕事に取り組んだ。
いや、そのつもりだったし、まわりにもそう見えただろう。
集中できない……。時給換算するといくらだろう、今やっていることはいくらぐらいの価値なんだろう。それは私の全財産の何%なんだろう……。
日本のサラリーマンの生涯賃金の平均など、はるかに超える金額を既に手に入れてしまったのだ。
価値観がくるってしまった。今まで楽しいと思えた仕事も、とてもつまらなく退屈だと思えてしまった。
お茶くみだのコピーだの、そういったこととやってる内容の違いが分からない。
まわりの人間が何故こんな仕事に夢中になれるのか。
……いや、自分も何故今まで夢中になれたのか。 どうすればいいのかわからなかった。
お昼休みになり、深いため息をついた。まるで3日間は寝食なしに働きつ続けたような気分だった。
「絵里果~。ちょっとお金貸してくれない?今月きついのよ~。」
時々一緒に昼食を取る同僚だった。
「い・・・いくら?」
上ずった声だった。
お金貸して……?まさか知ってるの……?
瞬間的にそう感じ、心理的に身構えた。
しかし彼女はすぐに他に頼ると言い去っていった。
なんでもない、本当にただの金欠で少し借りたかっただけなのだろう。
それなのに私は……。
同僚に申し訳ないことをした。 どうしてこんなことに……。
自分の精神状態がとても参っているからだ。
そうとしか思えない。
「帰ろう……。」
課長に早退する旨を告げ早退することにした。
まわりはいつもと違う様子の彼女を見て、心配そうに声をかけ彼女を見送った。
声の主の名は佐藤絵里果。社会人2年目の24歳のOLだ。
彼女が手に持っていたのは銀行の預金通帳だ。
驚くべきことに一つとして同じ場所のものは無く、30種類の通帳があった。
「はあ~……。これからどうしよっかな。」
通帳を見て困り果てた彼女を見れば多くの人が借金操りに困っているのかと思うだろう。
しかし現実は逆だった。
預金通帳には預け入れている額が全て一千万円以上。五千万円以上預けているものもあった。
何故ただのOLにすぎない彼女がそのような大金を持っているのか。
宝くじに当たったためだ。
冗談言うなと思うかもしれないが、複数のものに同時に当たってしまい、総計5億となった。
今や彼女の全財産は五億百万円。百万円は2年間で彼女が貯めた額だった。
「2年間頑張って貯めた金額の500倍が一瞬で手に入っちゃうなんてなあ……。」
ほとほと困り果ててしまった。
大金が手に入って遊び呆けようとは考えない堅実な性格だった。
また宝くじに当たったことを自慢すれば犯罪に巻き込まれるかもしれない事も、それを防ぐためにも仕事をやめるわけにはいかない事も彼女は分かっていた。
しかし、どれだけ頑張っても年収は今の全財産の1%にも満たないだろう。
そうなってしまってはモチベーションは上がらない。
「仕方が無い……。ひとまず明日は普通に会社に行こう。それでから考えよう。」
通帳を引出しの中にまとめて片付け、床についた。
株式会社東現の朝はいつも静かだ。始業時間ぎりぎりに来るような人間はいないからだ。
いつもなら。
佐藤絵里果は前日、なかなか寝付けず寝坊して遅刻した。
「おいおい、ぎりぎりだな~。たるんでるんじゃないか~?」
同僚の冷やかす声に耳を傾けることもなく着替え、朝礼を聞き、仕事に取り掛かった。
二年目の彼女は多少は責任ある仕事を任されていた。
今日も彼女は一所懸命にその仕事に取り組んだ。
いや、そのつもりだったし、まわりにもそう見えただろう。
集中できない……。時給換算するといくらだろう、今やっていることはいくらぐらいの価値なんだろう。それは私の全財産の何%なんだろう……。
日本のサラリーマンの生涯賃金の平均など、はるかに超える金額を既に手に入れてしまったのだ。
価値観がくるってしまった。今まで楽しいと思えた仕事も、とてもつまらなく退屈だと思えてしまった。
お茶くみだのコピーだの、そういったこととやってる内容の違いが分からない。
まわりの人間が何故こんな仕事に夢中になれるのか。
……いや、自分も何故今まで夢中になれたのか。 どうすればいいのかわからなかった。
お昼休みになり、深いため息をついた。まるで3日間は寝食なしに働きつ続けたような気分だった。
「絵里果~。ちょっとお金貸してくれない?今月きついのよ~。」
時々一緒に昼食を取る同僚だった。
「い・・・いくら?」
上ずった声だった。
お金貸して……?まさか知ってるの……?
瞬間的にそう感じ、心理的に身構えた。
しかし彼女はすぐに他に頼ると言い去っていった。
なんでもない、本当にただの金欠で少し借りたかっただけなのだろう。
それなのに私は……。
同僚に申し訳ないことをした。 どうしてこんなことに……。
自分の精神状態がとても参っているからだ。
そうとしか思えない。
「帰ろう……。」
課長に早退する旨を告げ早退することにした。
まわりはいつもと違う様子の彼女を見て、心配そうに声をかけ彼女を見送った。