こんばんわcoapn-zeroです。
いよいよ最後です。
人生初の自分のためだけの時間がはじまった。
ワンルームのマンションに引っ越した。
ほとんど身一つで引っ越したからっぽの部屋で家具のDIYから始めた。
なにも考えずに没頭した。毎日ヨガとジョギング。
1週間もすると家具も一通り作り終わりやる事がなくなった。
心は空っぽのままだった。
地元に帰った。
母との会話と豚汁が心の痛みを和らげた。
一月ほどボーっと過ごした。
育った田舎町の山々を眺めて山荘の近くの露天風呂に毎日通い穏やかに過ごした。
それでも心は起き上がらなかった。
そして稀にある人生の最悪時に必ず行う儀式の決行を決意、山に入った。
子供の頃から人生で迷ったり苦しんだ時山に入る。
自転車をひたすら漕ぐ。
子供の頃と同じ、超絶に無駄な遠回りのルート。
当時は当ても無く彷徨っていたからだ、だがそれが良かった。
ただでさえ田舎町、家もまばらな地域からさらに奥に入っていく。
十数時間休まず自転車を漕ぎ続け人家も無いエリアに入り、不法投棄のガラクタエリアをさらに奥へ進む。道が途切れ自転車を乗り捨て握り締めた懐中電灯を点ける。
人は滅多にこないような山奥、延々と獣道を行く。
外灯も無く月の明かりがなければ目の前もおぼつか無い、自殺者も多く獣も出る、この世で無いものもでる。ここまで来ると遭難の危険のあるギリギリの区域だ。
そして地元の人間にもほとんど知られない廃墟に近い神社についた。
高い木々に囲まれたその建物には月明かりも届かず雑草は腰辺りまで伸びていた。
ここに来るまでに体は既に恐怖でいっぱいだった。
ボロボロの縁側に座りあぐらをかいた、腕時計の日付が変わっていた、懐中電灯を消した。
雲が月を隠した。
そっと目を瞑る。
人生で3度目。
なにもかもが懐かしい・・・なんて感傷に浸る暇はなかった。
目を開いてもそれがわからない深い圧倒的な漆黒と虫の鳴き声すら聞こえない時が止まったかのような静寂。
それは平衡感覚を狂わせ自己の存在の認識すらあやふやにしていった。
圧倒的な恐怖。
五感が針のように研ぎ澄まされいく。
闇と静寂の中に自分の深層のネガティブで黒い部分、悪の塊の様な存在を感じそれに食い殺されてしまう恐怖の感覚が襲う。
聞こえるはずも無い叫び声が頭の中にこだまする。
体中から汗が噴出して呼吸が乱れていく。
震えと悪寒が体を襲い歯がカチカチと音をたて涙と鼻水が噴出した。
すぐにでも叫び駆けて逃げ出したくなる。
心を必死に奮い立たせ人生であった苦しい事つらい事を必死に思い出す。
が、一瞬で掻き消えていく、そんな余裕すら与えられない。
それでも抗い思い出し続ける、掻き消える、思い出す、掻き消える。
生まれてから今まであった苦難が飛ぶように駆け巡るが、一瞬で掻き消える。
胃液が嗚咽と共に込み上げた。
バケツを被った様な汗と涙と鼻水と共に胃液が口から涎の様に垂れる。
何時間経ったのか。
「キィ・・・」
神社の建物の何処かが軋んで鳴った。
限界だった。
叫び夢中で駆け出した。
山の中をひたすら転げ落ちるように駆け抜ける。
どのくらい走ったかわからない。
転げ落ちた先は山間の渓谷だった。
川の片隅の川原に倒れていた。
頭と鼻から流血していた。
川のせせらぎが聞こえ月明かりが自分を照らしていた。
安堵感。圧倒的な安堵感。
痛む体に鞭を打って腕を上げ時計を見た、神社に入って15分ほどしかたっていなかった。
体中から力が抜けそのまま気を失った。
強い陽射しが自分を覚醒させた。
日の暖かさと美しい渓谷の風景と川のせせらぎ、鳥の鳴き声が心に安らぎをもたらした。
体中の痛みが心地良かった。
腹が鳴った、笑いが込み上げた。
ふつふつと心の力が湧き上がってくるのを感じた。
ふらふらになりながら自転車を乗り捨てた場所に戻る。
空を飛ぶように一気に山道を下り降りる、風が体中を包みこんだ。
実家に戻り鍋いっぱいの豚汁をすべて平らげた。
充実感と安心感で目頭が熱くなった。
風呂に入って丸2日眠った。
次の日東京に近い自宅へ戻り会社へ復職を願い出た。
最後のつもりでしたが終わらなかった・・・次こそ最後になります。