今年の3月
その日 東京 六本木の夜は少し肌寒く吐く息も心なしか白くなっていた。
ボス
舘ひろし
彼の67歳の誕生日
小躍りしつつも少し緊張して会場へ向かった。
そこにはバイクチームのCOOLSのメンバーとピッピがいた。
皆COOLSの正装である革ジャンを着ている。
如何にも昔悪かっただろうと思われるオヤジ達。
でもそこには昔のような殺伐としたものはない。
髪も白くなったと同時に人生の機微を経験した者だけが持ついぶし銀な味わいのある顔をしている。
俺が入ると「誰だあいつは?」と怪訝な顔を露骨にして来た奴がいたが「東北連合の鈴木さんじゃないですか!」の一言で皆顔色が変わった。
あの時代から何十年も過ぎてるのに未だにチームの名前に神通力がある事に驚く。
ボスは遅れて到着した。
「おーすずきィー 会いたかったぜ」
立ち上がり握手すると嬉しそうにハグしてくれた。
相変わらず身長が高く動作のすべてが絵になる。
やっぱり問答無用にカッコいい。
ずっと見ていたい衝動にかられるほどだ。
あらためて言うがCOOLSにはバイクチームのメンバーとバンドにも参加してるメンバーとがいる。
ピッピこと水口晴幸はその両方に参加していたメンバーである。
やっぱりジェームスや秀光 一海らはこの席に呼ばれなかった。
あたりまえだ!ボスのCOOLS脱退の原因を作り未だにCOOLSで商売してる連中だ。
余談だがこんな話がある・・・
Cools Rockabilly Clubの第2弾アルバムである「BE A GOOD BOY」の時の事だ。マネージャーのSから電話で「村山には参ってるんですよ。『俺を郷ひろみみたいに売り出せ』って」
あいつは売れるならアイドルでもタレントでも何でも良かったんだろうな。そんな奴が未だにCOOLS名乗ってロックンロールだなんてちゃんちゃら可笑しい。
そう言えばボスとの最後のアルバム「HELLO GOOD BYE」。実はこれに秀光と村山がボスがヘッドホンして聞こえないのをいいことに散々「下手くそ!止めろ止めろ」と嘲笑していた。
奴等が馬鹿なのはこの声が今もレコードをよく聞くとハッキリ入ってる事だ。
発売されてからその事実を知ったボスは苦笑いしながら言った「いいさ、もうコイツ等とは2度と会う事はないんだから」
オリジナルメンバーでのCOOLSをもう1度見てみたい。そんな声はよく耳にする。
だがそもそも脱退した理由を知っている俺からするとCOOLS再結成はありえない。絶対に。
彼らがこの誕生会に呼ばれなかったのは当然の事なのだ。
ボスとはいろいろ話した。
西部警察にボスが出演してた時、撮影が郡山であった。
石原プロの役者スタッフは全員磐梯熱海の栄楽館に泊まっていた。
「鈴木ちょっと会おうぜ」って事でホテルのロビーにあるコーヒーラウンジで会う事になった。
そして会計の時現金ではなくカードで払おうとボスはサインした。
舘ひろしと・・・
するとそこの店員がその伝表を自分の宝物にしたため支払の請求がなく、しかもその店員(女性)は後にクビになったようだった。
なんて話とか
やんちゃした話やコッチ(小指)の話まで。
ボスがこーちゃん(岩城滉一)と出会いCOOLSを結成し、お互いがバイクチームのトップという立場だった事も親密になった理由のひとつだろう。
ボスは「よくあれだけの大きな組織をまとめられたよな」と東北連合の規模の大きさを褒めてくれる。
嬉しいが東北連合でも絶対敵わないのがCOOLSだ。原宿を拠店にして革ジャンにリーゼント。そしてハーレーダビッドソン。こんなにカッコいいバイクチームはない。
暴走族と言えば木刀持って特攻服って時代にだ。しかもバンドまで。
あの当時、全国の不良の憧れは紛れもなくCOOLSだったし良い意味でも悪い意味でも個性的過ぎるメンバーばかりだった。
ボスがCOOLSを脱退した後セクシーダイナマイツを結成した。
当時ボスは様々なところで「舘は矢沢になりたいんだろ?」と言われた。 あの商売人の朝鮮人矢沢永吉に。
確かにキャロル脱退後の矢沢はソロで大成功をおさめた。
そんな矢沢も実は役者でも成功したがっていた。それはボスの活躍を見て「俺にも出来るはずだ」と。結果はご存知の通りだ。
「泣かないで」のヒットはあったものの歌手としてよりも役者としての評価が高いボス。
歌手として不動の地位を築くも役者としては大成しなかった矢沢。
ボスが矢沢になりたかったか・・・ 今となってみればどうでも良い話だ。
それよりも俺の隣で赤ワインを飲んでるカッコいい長身の男が怒り出した。
「これじゃない!違う革ジャンだ。もう一回戻って取って来い!」
実がメンバー全員が革ジャンで来る事をボスは知らず「何だよぉだったら俺も着てきたのに」とマネージャーを呼びつけて自宅まで革ジャンを取りに行かせた。
ところがその革ジャンがボスの指示した物とは違うものだったらしい。
「いやボスこの革ジャンも随分かっこいいですよ。これで良いじゃないですか」
そう言ってもボスは聞かない。「急いで持って来い!」
マネージャーが持って来た革ジャン・・・ 正直さっきとの違いはよくわからなかった、
でも未だに革ジャンに対して拘りがあることがわかった。
やっぱりCOOLSだ。いくつになってもボスはボスなんだ。
場所を移しボスがなじみと思われるクラブに入った。
「あらひろしさん。今日はどんなお集まり?」
「ママ、今日は暴走族の集会なんだよ」
そう言って笑ったボス。
夜も深まり気がついたら俺とピッピとボスの3人だけになっていた。
「そろそろ帰るか」
外に出る。
六本木の夜は寒く風が冷たい。
俺達3人は路地裏に入って並んで立ち小便していた。それはまるで悪ガキ3人組。
後ろから見たら月のあかりが照らして妙なシルエットになっているかも知れない。
「芸能人がこんなとこ見られたら…」そう思っていたら「これがホントの舘ションだな鈴木」
そう言って楽しそうに笑った。
絵になる男はションベンする姿さえカッコいい。
ボスとピッピ
本物の不良 本物のCOOLS。
それはかけがえのない友人。
そして財産。
病室に置けないのでナースステーションに飾ってもらったら大勢の人が写真撮っていきやがった。



