男道 〜鈴木康之物語〜 -10ページ目

男道 〜鈴木康之物語〜

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夜は魔物だ
 
 
喧嘩は夜するもんじゃない。

太陽が沈み星が瞬き、月明かりが照らす。
夜ってヤツは男の闘争心をどこか掻き立て自制心を失わせる。
それは暗いことで怪我の度合いがわからないせいかも知れないし、余計なものが視界に入らないので集中し易いって事もあるのかも知れない。
いやもしかすると人間のDNAに夜は狂暴になるというのが入っているのかも知れないな。
まぁとにかく 夫婦喧嘩でも親子喧嘩でも夜は控えたほうが良い。

 
俺達東北連合はなめられたら黙ってなかった。
それは暴走族として社会と対峙する際のプライドでもあった。
今思うと「そんな安っぽいプライド」と思うがあの頃はチームのトップとして虚勢を張らなければいけなかったし組織を守る意味でも大事な事だった。
まして東北連合の鈴木の首をとる!  そんな奴等は沢山いて駅前を歩くにしてもずっと緊張しながら仲間と歩いたものだった。
 
「何見てんだこの野郎」
俺の声はよく通るのか少し大声を出すと一斉に人が逃げ出す。
小さな喧嘩はしょっちゅうだった。
それは年上だろうとヤクザやだろうと関係ない。
そして首を取りに来る他の暴走族には容赦なく叩きのめした。
 



そんな中
どうやら会津の暴走族が郡山に来て悪さしてるという。
 
 
駅前や人の多い場所に出没しガンを飛ばし喧嘩を売る。
 
そして俺や東北連合の幹部の名前を言って探してるようだ。

このままにはしておけない。

どうやら女をとったとられたの話らしい。
向こうは相当頭に来てて東北連合壊滅さえ口にしてる。
当事者に聞くと合意の上だと言うが・・・

「お前やったのか?」
「いやそのぉ」
「やったのか?」
そいつは俯き下を向いた。
 
「しょうがねぇな」
 
 
これが後に「栗子峠の大決闘」と呼ばれる喧嘩の原因。
300人対300人と言われてるけども実際にはもっといたはずだ。
それを取材しにきた記者やマスコミもいた。
 



秋の始め
まだ半袖でも充分な気候の頃、俺達は気勢を上げて栗子峠に向かった。
着くとそこには既に向こうの姿があり大声でこちらを威嚇している。
 
「お前ら 絶対許さねぇ」
「上等だこの野郎」
 
恐らく無関係の者まで無理矢理連れて来られたのだろう。どう見ても族とは思えないようなヤツもいた。それを見た時この喧嘩は勝ったと思った。
 


夜中にもかかわらずカミナリが鳴り出した。
時折光る稲光がまるでストロボライトのように周りを照らす。
俺は少し太めの木刀でぶっ叩いて行く。
まるで合戦場のように若い男達の叫び声が怒声が響きわたる。
今こうして他人事のように書いているが、あの時よくぞ死人が出なかったと思う。
木刀で頭を叩くと「グシャ」という音がするんだよ。
それを何回やっただろう。あの音は今考えても恐ろしい音だ。まるで漫画のようにグシャっと音がして頭を抱え倒れて行く。
血だらけで横たわるヤツ。逃げ惑うヤツ。気絶して動かないヤツ、まだ幼く怖かったのだろう泣いてるヤツまでいた。

時間にしてどのぐらい続いたのかは覚えていない。
俺も夢中だったしあの時は夜という魔物に俺自身が侵されていたのかも知れない。

気がつけば俺の体は返り血で染まっていた。


 
福島県警に続いて山形県警まで登場し大混乱となりこの戦いは終わった。
 
俺達の勝利だ。



 
戻る途中に福島市内の夜景が稲光で照らされた。
安堵と同時に言いようのない虚脱感に襲われた。
「いったい何のために 誰のためにこんなことを…」
 

少しずつ
そしてゆっくりと俺の中で何かが変わり始めていた。



 
 
第三章に続く