おん祭夜に入る風の尖りきて   長野 眞久

 

春日大社のおん祭。

正確には、「春日若宮おん祭」

春日大社のHPに詳しいので、そちらを見ていただくといいのですが、

天押雲根命(あめのおしくもねのみこと)という名の神様です。

水徳の神と仰がれてきました。

長承年間(1132‐1135)、長年にわたり大雨洪水による飢饉がつづき、

疫病が蔓延したので、白河上皇他による強い望みがあり、

若宮様へご加護を願いました。

長承4年(1135)現在の地に大宮と同じ規模の御殿を造営し、

翌年、春日野に御神霊をお迎えして祭礼を奉仕したのが、

「おん祭」の始まりだそうです。

 

12月に行われるおん祭は、一度も欠かさず続けられている祭りであり、

たいそう豪奢な印象の見せ場の多いお祭りです。

小春の季節とはいえ、日のもっとも短いこの頃、

日没後の風は痛く感じるほど冷たいものでしょう。

冷え込みを感じる時刻を「風」で言い表しました。

「刺すような」「打つような」という表現はよく使われますが、

この句は、

「風が尖りくる」と表されました。

「尖る」という形容が秀逸です。

これにより、肌感覚で、風の冷たさ、強さが伝わります。

また、風を詠むにとどめているため、

肌に受ける感覚の想像の幅が広くなります。

これが写生です。

風を写すのは難しいですが、見事に言葉に表現されました。

勉強になりますね。

 

400号より