日本海波立つ十二月八日   尾池葉子

 

氷室編集長 尾池葉子先生の作品です。

 

十二月八日、日本人にとって忘れてはならない日です。

太平洋戦争開戦の日。

真珠湾攻撃のその日です。

「日本海波立つ」

これだけで「十二月八日」を表しています。

何気ない写生ですが、開戦の日なだけに、

むしろ訴える力を持つと思います。

激しい思いを激しく表現するより、

静かに言い表した方が、心に響くと思いませんか。

また、「日本海」が良いと思いました。

私は日本海側に住む者ですが、冬の海の激しさは、

恐れを抱くばかりです。

このころは、まだ小春のころですが、

だからこそ、これから荒れはじめる海を思うと、

心が波立ってきます。

 冬が来る

それは、戦争の不穏を感じさせる「恐れ」です。

太平洋では、明るすぎて良くないと思いました。

日本海だからこそ、陰鬱な歴史に合うと思いました。

日本海だからこそ、過ぎた描写はいりません。

「波立つ」それだけで伝わります。

余分を極限までそぎ落とした一句。

重いテーマなだけに、それだけで十分なのです。